——2023年1月-3月のDCファンドの状況について教えてください。
ここではDCファンドの資金流出入動向について確認します。1月の資金流出入額は約470億円の流入超、2月は約140億円の流入超、3月は約1,160億円の流入超となりました(図3)。3月は2022年6月以来となる1,000億円超の資金が流入しました。資金流入額は、多い順に、外国株式型(約470億円)、複合資産型(約410億円)、国内株式型(約120億円)となりました(図3)。
図3 ファンド分類別 月間流出入額推移(DC専用ファンド) 拡大図表示
次に直近6ヵ月の資金流出入額の累積は、外国株式型が1,540億円、複合資産型が1,350億円と人気を二分していますが、外国株式型がやや上回る傾向が続いています(図4)。外国株式型は、若年層から支持を集めているものと考えられます。若い世代にもDCによる資産形成が広がっているようです。
国内株式型にも約430億円と相応の水準の資金が流入しています。外国株式型と比べるとやや少額で、過去の資金流出入の推移をみると、資金が流出する月もあるようです。相場の動向に応じたスイッチングにより売買を行う加入者も一定数いるものと考えられます。
図4 ファンド分類別 月間流出入額推移(DC専用ファンド) 拡大図表示
では続いて、個別ファンドではどのようなファンドに資金が流入しているのか、外国株式型と国内株式型の2つのアセットクラスについて確認しましょう。まず、外国株式型の月間資金流入額上位15ファンドについて確認します。ランキング表(図5)のとおり、上位15本のうち13本がMSCIコクサイ指数などの世界株価指数に連動するパッシブファンド、インデックスファンドとなりました。パッシブファンド中心に資金が流入する傾向に変化はありません。
一方、アクティブファンドからは、「DIAM外国株式オープン<DC年金>」が12位にランクインしました。運用管理費用は1.86%とパッシブファンドと比べ割高ですが、リターンの水準は直近1ヵ月で1.1%、直近6ヵ月で15.1%と、パッシブファンドのリターンを大きく上回る水準となっています。
当ファンドは日本の運用会社であるアセットマネジメントOneが設定するファンドですが、実際の運用は外国の運用会社である「キャピタル・インターナショナル」の助言に基づいて行われます。当ファンドはファンドの資産を複数に分割し、それぞれ異なるポートフォリオ・マネジャーが自分の得意とする運用手法でベンチマークを上回ることを目指します。複数のファンドマネジャーが運用する資産を最終ポートフォリオとして集約することから、特定の運用スタイルに偏らずにバランスの良い運用が行われる点がメリットです。
図5 2023年3月 外国株式型(DC専用ファンド) 拡大図表示
次に、国内株式型の月間資金流入額上位15ファンドについて確認します。ランキング表(図6)のとおり、上位15本のうち10本がパッシブファンド、5本がアクティブファンドとなりました。外国株式型と比べるとややアクティブファンドの本数が多くなりました。6位の「大和住銀・DC日本バリュー株ファンド」を始め、9位の「DC・ダイワ・バリュー株・オープン」、14位の「MHAM日本バリュー株<DC年金>」と、「バリュー」と名の付くファンドが目立ちます。
図6 2023年3月 国内株式型(DC専用ファンド) 拡大図表示
バリュー株は企業の利益や純資産の水準に対し株価が割安な価格で取引されている株式のことを言います。2022年に世界の金利が上昇基調に変化すると、バリュー株の対極に位置するグロース株(現在の株価の水準に拠らず将来の成長性を重視して取引される株)が業績悪化懸念から下落し、バリュー株が注目されるようになりました。こういった相場の動向がDCの市場にも影響を与えたものと考えられます。
長期の視点に基づく運用が原則のDCではありますが、特に国内株式では相場の動向に応じてファンドを選択している加入者も一定数いるようです。