DCガバナンスの視点から受託者責任を果たす目的で、投資信託のモニタリングや入れ替えを検討・実施する企業も少しずつ増えています。そこで、投資信託のモニタリングに役立つDC商品マーケットの最新状況を、投資信託評価会社である三菱アセット・ブレインズの標氏に解説していただきます。

※この記事は、2023年4月27日(木)に実施したWEBセミナー「 最新DC 投信マーケット解説 2023年4月号」を記事化したものです。

——早速2023年1月-3月のDCマーケット状況について伺いたいと思います。まずはアセットクラスごとのパフォーマンスをお聞かせください。

図1は過去2年間のファンド分類別の累積パフォーマンスを示したものです。2022年は金利が上昇基調で推移したことから、株式・債券等が同時に下落し、幅広い資産でパフォーマンスは軟調となりました。

2023年1月-3月の推移をみると、1月は世界各国でのインフレ率の鈍化、中国の経済活動再開への期待等を背景に、景気悪化懸念が後退し、株式・債券ともに上昇、良好な相場環境となりました。

2月にはインフレ率の高止まりから米欧の中央銀行による利上げ長期化が再燃し、株式はやや軟調、債券は下落しました。

3月は月上旬に米国のシリコンバレー銀行が経営破綻、その後欧州では金融大手のクレディ・スイスの経営不安が表面化し、金融システム不安から株価は一時下落しました。しかし、米国政府やスイス政府による対応策などからその後の市場は落ち着きを取り戻し、株価下落は最小限にとどまりました。

図1 分類別累積パフォーマンス  拡大画像表示

※ 公社債投信等を除くDCファンド(専用・共用)について月間収益率をカテゴリー別に単純平均し、 24ヵ月前を100として指数化したもの。 出所:三菱アセット・ブレインズ

次に分類別に直近3ヵ月のパフォーマンスランキングを確認します(図2)。まず、2023年1月にパフォーマンスが良かったのは、外国REIT、エマージング株式、外国株式、国内株式といったリスク性資産のカテゴリーです。世界的な金利の上昇がいったん落ち着いたことが、これらの資産のパフォーマンスにプラスに寄与しました。

2月は、外国株式、国内REIT、国内債券などが上昇しました。外国株式では円安の進行がプラスに寄与し、国内REIT・国内債券では、日本銀行の新体制でも金融緩和が継続されることが確認されたことなどが安心材料となりました。
3月は、米欧の金融システム不安が重石となりました。特に、外国REITは6%超のマイナスとなりました。金融不安を受けたREIT市況の不調や円高の進行がマイナスに影響しました。

以上のとおり、当該期間はインフレ率および各国中銀の動向、米欧の金融システム不安といった様々な要因により、各アセットクラスの価格は推移しました。

図2 分類別パフォーマンス 拡大図表示

※ 公社債投信等を除くDCファンド(専用・共用)について各期間別の収益率をカテゴリー別に単純平均し作成したランキング表。 出所:三菱アセット・ブレインズ