・就任わずか45日で辞任表明…「英国病」脱却したサッチャーとの明暗

事業が成熟した大企業は成長スピードが低下する一方、資金力に優れる傾向にあります。これらの要因から、成長戦略にM&Aを据える大企業は少なくありません。M&Aとは、他社の事業や他社そのものを買収することなどを指します。

日本の大企業が仕掛けたM&Aでこれまで最大規模だったものが、武田薬品工業によるシャイアー買収です。2018年5月8日、武田薬品工業が約460億ポンド(約6.8兆円)でシャイアーの全株式を取得することで両社が合意しました。

武田はなぜシャイアーを買収した?

武田薬品工業は、1781年創業の歴史ある製薬会社です。もともと国内ではトップクラスの売り上げを誇っていたものの、アメリカのジョンソン・エンド・ジョンソンやスイスのロシュといった世界的なメーカーとは大きな差がありました。これらの企業はM&Aによってシェアを拡大しており、グローバル展開に遅れれば競争に敗れるという危機感が武田薬品工業にあったとみられます。

そこで、武田薬品工業はアイルランドのシャイアーの買収を計画します。同社は武田薬品工業の主要ラインアップにない希少疾患の治療薬に強みを持つ一方、武田薬品工業が強みを持つオンコロジー(がん)分野で遅れており、両社を統合することで弱みを補い合うことが期待されました。またシャイアーがアメリカ市場で一定のシェアを持つことも、より本格的に海外に進出したい武田薬品工業の興味を誘ったとみられています。

しかしシャイアーは武田薬品工業と同等の規模を持つ大企業で、買収には高額な費用がかかることは明らかでした。この買収計画は2018年3月下旬ごろから報道されますが、巨額な買収費用が嫌気され、武田薬品工業株式は大きく値下がりします。

【武田薬品工業の株価(2018年)】

Investing.comより著者作成

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