・「南の楽園」が過去最悪の財政破綻…債務8.4兆円、人口流出止まらず

近年、イギリスでは女性首相が立て続けに誕生しています。しかしブレグジット(イギリスのEU離脱)を巡る混乱などから、いずれも短命政権に終わりました。史上2人目の女性首相であるメイ氏は就任から約3年、3人目のトラス氏は就任からわずか45日で辞任を表明しています。

その点、最初のイギリス女性首相であるマーガレット・サッチャー氏は、長期政権を築きました。就任は1979年5月4日で、1990年11月28日まで約11年半もの間、首相を務めあげます。

「英国病」からの脱却を導いた“鉄の女”

サッチャー氏が就任した当時のイギリスは、「英国病」とも呼ばれる経済の停滞を迎えていました。サッチャー氏は、政府による手厚い保護が労働意欲を減退させ、生産性の低下を招いたために英国病に至ったと考えます。

【イギリス経済における1960年代と1970年代の比較(前年比値の平均)】

出所:内閣府 世界経済の潮流(2010年 II)

首相に就任したサッチャー氏は、それまでの保護的な政策を転換し、労働組合の解散や規制の緩和などを実施し、市場に徹底した競争原理を持ち込みます。経済は次第に改善に向かい、1人あたりGDPの上昇や高止まりしていたインフレ率の低下が見られました。

大きな方針の転換は失業率の上昇といった痛みも伴ったため、サッチャー氏は批判にさらされます。しかしサッチャー氏は改革を断行し、強いイギリス経済を取り戻しました。サッチャー氏が“鉄の女”と呼ばれることとなった由来には諸説ありますが、批判に負けない姿勢はその愛称にぴったりといえるでしょう。

【サッチャー政権下のイギリス経済の状況(1980年~1990年)】

IMF「世界経済見通し(2022年10月)」より著者作成

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