「大きい政府」と「小さい政府」はどっちがいい?
イギリスは第2次世界大戦後、政府が需要を喚起する総需要管理政策や、“ゆりかごから墓場まで”とも称される手厚い福祉政策を実施しました。このように、市場に積極的に介入するような政府を「大きな政府」といいます。サッチャー政権では反対に、市場への介入を抑制する「小さな政府」を目指すこととなりました。
「大きな政府と小さな政府のどちらを選択すべきか」は、選挙にも深く関わってくるテーマです。それぞれどのような特徴があるのか、経済学の観点から簡単に考えてみましょう。
大きな政府は市場に積極的に介入するため、一般に課税を実施し財源を確保します。課税は取引量の低下や価格の上昇などを招き、政府の収入を加味しても社会全体で利益の総量が減るとされています。
この課税によって社会から失われた利益を「死荷重(しかじゅう)」と呼び、他に取引量の規制や参入規制などでも死荷重が発生すると考えられています。このことから、「政府はやみくもに市場に介入すべきではない」としばしば指摘されます。
ただし「市場の失敗」を考慮すれば、自由競争もまた完全ではありません。市場の失敗とは、市場参加者の自由な取引に任せた結果、かえって社会全体の利益が小さくなってしまう現象をいいます。例えば公共財のように社会に重要なものの利益の出しにくいものが十分に供給されないケースや、売り手が商品やサービスを独占し競争が進まなくなってしまうケースなどが代表的です。
また自由経済では政府が介入しないため、租税と還元を通じた所得の再分配には期待できません。従って、小さな政府では経済格差の拡大が進むことが予想されます。
このように、大きな政府と小さな政府には一長一短があり、どちらがよいか断定することは簡単ではありません。また、これらの考え方は完全競争経済を前提としていることも多く、直ちに実際の経済に当てはまるとも限らない点には注意してください。