巨額買収で業績はどうなった?

当初は厳しい評価が目立ちましたが、現在では買収の効果が表れ始めています。シャイアーの基盤を手にした武田薬品工業は、アメリカを中心に海外の売上収益が大きく増加しました。武田薬品工業が目指した海外展開の強化は、この買収で大きく進んだようです。

【主な地域別の売上収益】

※()は構成比

出所:武田薬品工業 決算短信

収益力も向上が見られます。本業のもうけを示す営業利益は、買収後に買収関連費用などから減少しますが、現在では買収前を大きく上回っています。もっとも、営業利益率は買収前とほぼ同水準であり、統合によるシナジーの発現はまだ道半ばといえるかもしれません。

【武田薬品工業の業績推移】

武田薬品工業 決算短信より著者作成

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シャイアー買収では特に財務の悪化が懸念されましたが、現在は回復傾向にあります。武田薬品工業は買収のために資金調達を実施したことから負債が積み上がり、自己資本比率は一時30%台にまで落ち込みます。しかし、借入金の返済や発行した社債の償還が進んだこと、また円安や利益剰余金で自己資本が増加したことなどから、2021年3月期に40%台を回復しました。

【武田薬品工業の財務推移】

武田薬品工業 決算短信より著者作成

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買収から5年たちますが、武田薬品工業によるシャイアー買収の成否を語るには時期尚早といえるでしょう。しかし、少なくとも現時点ではおおむねうまくいっているようです。