iDeCoは、手数料がかかります。加入時に2829円、その後毎月の口座管理料と投資信託の信託報酬、そして受け取る際に約400円の給付手数料がかかります。よく、「NISAには口座管理料なんてないのに、iDeCoは費用がかかるから損だ」と言われます。今回は、加入後残高がある間ずっと負担する、その口座管理料に焦点を当てて引き下げ余地はないのか考えてみたいと思います。
口座管理料は、3つの機関がそれぞれの業務に対して提示している費用の総合計です。1つ目は国民年金基金連合会の加入者手数料、加入者ごとの拠出上限に見合った掛金収納の費用として月額105円がかかります。次に、全体の財産管理をしている信託銀行が資産管理手数料として(ほとんどの信託銀行が)月額66円、そして3つ目は運営管理機関、つまりみなさんが契約相手としている銀行や証券会社に支払う手数料です。制度や商品の情報提供、ひとり一人のiDeCo口座の細かい管理、問い合わせ対応等を担う対価として支払う手数料になります。
国民年金基金連合会や信託銀行の手数料は制度開始以来上がったことはあっても下がったことはありませんが、これまで多くの運営管理機関が、顧客獲得のために手数料の引き下げを行ってきました。現在運営管理機関として厚生労働省に登録しているのは157社(「iDeCoの制度概況(令和4年3月末現在)」)あるのですが、そのうち17社が自らの手数料部分については0円に設定しています。
この口座管理料の値下げ合戦は2017年1月に公務員や専業主婦もiDeCoに加入できるようになった時に端を発しています。それまでは競争でやや下がりつつあったものの、口座管理料の平均値は月額600円、年間では7200円ぐらいでした。今考えると随分高かった印象です。
口座管理の負担軽減に必要なのは…
では、その当時運営管理機関が儲かっていたかというと、そうでもありません。収入の大半は運営管理機関の収入になるのではなく、口座管理の業務を委託している記録関連運営管理機関(RK)への委託料として支払われていました。RKは加入者の数十年にわたる毎月の買い付けの記録管理だけでなく、前職の企業型確定拠出年金から持ち込んだ資産に付随する情報などもすべて管理・保存しています。
その膨大なデータに加え、増え続ける商品のデータ、さらには制度改正に伴って一人一人に付随して管理すべき項目も増えています。そんなこともあってか、加入者数がこの5年で10倍近くになったにもかかわらず、委託手数料単価が大幅に下がったという話は聞こえてきません。
結果、先述の0円手数料を掲げているネット証券をはじめとする大手運営管理機関では、毎月大幅赤字を積み上げつつ、その顧客がiDeCo以外で手数料を落としてくれることを前提にビジネスを展開しているものと思われます。
ただ、iDeCo以外で高い手数料の金融商品を売りつけられるのは加入者である顧客にとって本意ではありませんし、金融機関側にも顧客本位の業務運営が問われる中、この状態は好ましいものではないと思います。加入者にとっても、取り扱っている銀行・証券、そして記録関連運営管理機関にとってもサスティナブルな三方良し、を目指すべき時期に来ていると思います。そのために急ぎ取り組むべきは、口座管理の負担を下げる手続き面の簡素化、デジタル化です。