トヨタも社長交代でEV重視に?

23年に入り、国内自動車業界での大きなニュースは、トヨタ自動車の社長交代だろう。4月1日付けで豊田章男社長が会長に、新社長として佐藤恒治執行役員が就任する。2月13日の佐藤次期社長の会見では、新体制が取り組む重点事業の3本柱の一つに「次世代BEVを起点とした事業改革」を掲げ、「BEVファーストの発想で、モノづくりから販売・サービスまで、事業のあり方を大きく変えていく必要がある」と説明。その変革をリードするのが、佐藤次期社長が長年関わってきた高級車ブランド「レクサス」としている。従来から掲げるHVや燃料電池車(FCV)を含めた「全方位」戦略も維持する考えだ。

22年の各主要市場のEV新車販売比率は、中国が2割、欧州が1割を占める一方で、日本国内は1.7%にとどまる。ガソリン車と比べ比較的開発が容易なEVは新規参入がしやすいと言われている。日本・欧州・米国だけでなく、中国国内を中心に販売台数を伸ばす中国メーカー、ベトナムの複合企業最大手の「ビングループ」の自動車子会社など新興メーカーも参入している。

日本メーカーは、徐々にEVのラインナップを増やしているが、主要国ではすでにEV化の第一波が訪れていると言っても過言ではないだろう。そんな中、ソニーグループとホンダが共同出資するEV新会社「ソニー・ホンダモビリティ」は25年に新型EVの受注を始める予定だ。先のトヨタ佐藤次期社長は会見で、電動化について「足元でのラインナップを拡充するとともに2026年を目標に、電池やプラットフォーム、クルマのつくり方など、すべてをBEV最適で考えた『次世代のBEV』をレクサスブランドで開発していく」と発言している。

EVはまだ黎明期である。EV製造時の電力問題や材料コスト、EVの充電網の拡充など様々な課題はあるが、それでも主要国ではEV化を推進していることが、販売台数や比率からも分かる。2、3年後に国内メーカーが満を持して発売するEVがその先5年後、10年後に世界を席巻している可能性も否定できないが、現時点ではEV化のスタートダッシュに出遅れた感があるのは否めない。

執筆/鎌田 正雄

合同会社ユニークアイズ代表。大手産業総合紙で記者経験を積み、主に自動車業界や中小企業など製造業の取材に従事し、2021年に独立。「ものづくりのまち」で有名な東京都大田区生まれで町工場の息子。はやりのポイ活で集めたポイントを原資に少額ながら超低リスク投資を始めた