お金持ちは税負担が小さい?「1億円の壁」とは

大半の日本人は投資をしていないようですが、お金持ちは所得の多くを株式などから得ていることが「1億円の壁」からうかがえます。

1億円の壁とは、所得が1億円を超えると税負担率が減少する現象のことです。国税庁の「申告所得税標本調査(令和2年分)」によると、税金の負担割合は所得に比例して上昇していますが、1億円超で減少することが分かります。

【所得額、所得税および復興特別所得税の負担割合】

国税庁「申告所得税標本調査(令和2年分)」より著者作成

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1億円の壁の原因は金融所得課税にあると考えられています。株式などから得られる所得は一律20%(復興特別所得税を除く)で税金が計算されるため、利益がどれだけ大きくなっても税率は上昇しません。所得1億円超で税負担率が減少するのは、その多くを金融所得が占めているためだといわれています。

【一律20%で税金が計算される主な金融所得】
・預貯金や債券の利子
・株式、投資信託の譲渡益
・株式の配当金、投資信託の分配金(※1)
※復興特別所得税を除く
※1.申告分離課税を選択した場合

出所:財務省 金融・証券税制に関する資料

所得税は原則として所得が大きい人ほど負担する仕組みとなっており、1億円の壁は不公平だとよく批判されます。そこで、その是正を盛り込んだ令和5年度税制改正大綱が2022年12月に閣議決定されました。所得が3億3000万円を超える部分に22.5%をかけ、その額が本来の税金を上回る場合、その超過分を納めなければならないというものです。これにより、所得が30億円を超える層で追加的な税金が発生するとみられています。

【極めて高い水準の所得に対する負担の適正化】
その年分の基準所得金額から3億3000万円を控除した金額に22.5%の税率を乗じた金額が、その年分の基準所得税額を超える場合には、その超える金額に相当する所得税を課する措置を講じ、令和7年分以後の所得税について適用する。

出所:財務省 令和5年度税制改正の大綱の概要

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。