2022年のS&P500指数の下落は「テスラ株」も一因に

この欠点がリスクとして顕在化した分かりやすい例が、2021年のテスラ株の組み入れだ。テスラ社は、言わずと知れた米国の電気自動車大手で、昨年はツイッター社の買収を巡るイーロン・マスクCEOの言動がたびたび注目された。

テスラ社がS&P500指数に採用されたのは、2021年12月21日。当時、同社の株価はすでに割高な水準にあると各方面から指摘されていたが、時価総額で見たときの存在感の大きさゆえ、指数のルール上、もはや採用せざるを得ない状態であった。

採用後、テスラ社の株価は多少の調整がありながらも上昇したが、2021年11月をピークに、2022年は下落基調が続いた。結果、時価総額は一時、指数採用前の2020年の水準(株式分割考慮後)まで一気に逆戻りしてしまった。

このテスラの例から分かるのは、インデックス運用では、株価が割高な水準であると分かっていても採用が決定したら組み入れなくてはならず、短期的には、企業価値と必ずしも一致しない株価動向に振り回されてしまうケースがあるということだ。

なお、ニューヨーク・ダウ30種平均指数でも2015年3月に、当時すでに時価総額が世界最大だったアップル社を採用し、物議を醸したという経緯がある。同指数は株価(単純)平均型で、複合的な要素を考慮に入れて銘柄の採用を決定するため、S&P500指数とは少し背景にある事情が異なるのだが、割高な銘柄を組み入れざるを得なかったという事実は共通している。

話をテスラとS&P500指数に戻すと、長い目で見れば約7割下落した2022年の株価の動きなど、大したことではなかったと言える日がくるかもしれない。あるいは、合併や統合など、全く別の理由でテスラ社がS&P500から除外されることも、それはそれでありそうだ。

インデックス運用において、株価が極端に下落した企業はいずれ淘汰される。これこそが株式市場、とりわけ米国の株式市場に働く自浄作用であり、インデックスが長期投資に適している理由である。

しかし、事実上の「戦力外通告」を受け、指数から除外される寸前までは、指数全体の足を引っ張り続ける。また、今回例として挙げたテスラのように、インデックスに課せられたルールゆえ、不合理な投資行動を強いられることもあり、結果として、短期的に大きな値動きに見舞われる可能性もある。

インデックスファンドの使い勝手のよさを疑う余地はないが、「万能」であるかと言うとそれは違う。こうした弱点についても、冷静に把握しておくことが重要だ。