テスラの将来をどうみるべきか
競合自動車メーカーが続々とEV車のリリースを進めていることも、テスラの株価にとって悪材料だ。競合他社のEVへの移行が進めば進むほど、テスラは特別な企業ではなくなっていくと考える投資家は少なくない。
自動車業界の調査などを行うS&Pグローバルモビリティのデータによると、2020年時点でテスラは米国のEV市場においてシェアの約80%を誇っていた。しかし、2022年9月に65%まで低下。さらに、2025年には他自動車メーカーの参入により、テスラのシェアは20%未満にまで落ち込むという見立てが発表されている。
2022年末頃に、テスラはアジア、欧米地域で自社EV製品の大幅値下げを実施した。不振の影響を受けて販売台数を伸ばすことを目的とした苦肉の策とみられる。EV業界をリードしてきたテスラが、このような弱気な姿勢を見せたことで先行き不安に思う投資家もいるだろう。
一方、現在でも根強いテスラの信奉者は多い。それは、テスラが従来の自動車メーカーとは根本的に異なる姿勢を持つためだ。
通常、自動車会社は広告に多額の費用を投入するが、テスラは広告に一切費用を使わない企業として知られる。その分、浮いた資金は研究開発にあてているのだ。このような姿勢が数々のイノベーションを生み出すことに寄与してきた。
2022年には、発表以降長らく待たれていたEVトラック「セミ」の納車が米国で開始。今後はピックアップトラックの「サイバートラック」やスポーツカー「ロードスター」の新型モデルなど、注目度の高い新型モデルのリリースが控えている。
加えて、テスラはこれまでも家庭用蓄電池を販売するなど、事業をEV自動車の販売に限定していない。現在も自動運転技術を活かしたロボットタクシーの実用化や、自動運転で動く人型ロボットの販売を目指して開発を進めている。これらの取り組みが実現に近づけば、投資家たちの考えも変化していくだろう。
株価は大暴落したが、市場のテスラへの注目度は依然として高く、自動車業界の未来を考える時に無視できない存在だ。今後も、テスラが市場でどのような動きをみせるかを見守ろう。