ハイテク銘柄の中でも高い注目を集める米国のEV自動車メーカー「テスラ」の株価は、2022年に入ってから下落が続き、同年12月にはさらなる大暴落を見せた。
世界的に有名なカリスマ経営者イーロン・マスク氏が率いる同社は、2003年設立。自動車メーカーとしてまだまだ若い企業でありながら、2021年には純資産額でトヨタ自動車を追い抜き世界No.1に躍り出ている。
革新的な試みで人気が高く、数多くの投資家が注目する銘柄に何が起きたのか? 近年のテスラを取り巻く状況から紐解いていきたい。
「史上最大の資産損失額」でギネス記録を大幅更新
EVの弱点とされたバッテリー寿命の品質向上、北米に2万台以上の充電器設置、自動車の購入をオンラインで完結できるシステム整備……。数々の革新的イノベーションによって、EV業界を牽引してきたテスラ。
これまでのところ、テスラの株価が最高額となったのは2021年11月のことで、当時の株価は約400ドルであった。その頃からおよそ2年前、2020年初頭時点の株価が30ドル程度と考えると、いかに急激な成長を遂げているかがわかるだろう。2021年9月にマスク氏は、Amazonの創業者ジェフ・ペゾスを追い抜いて世界長者番付の首位に躍り出ている。
しかし、2022年は一転してテスラにとって厳しい1年となった。インフレの深刻化や米金利上昇にはじまり、さらには中国のサプライチェーン問題や3月頃から実施されたロックダウンが、上海に生産拠点を持つテスラの株価の悪材料に。その後もさまざまな要因によって値下がりが続き、年初に約350ドルだった株価は徐々に下落して、年末には約120ドルにまで落ち込んだ。
テスラの筆頭株主でもあるマスク氏は、同社の株価の大幅な値下がりによって保有資産額が激減。世界一の富豪の座を「LVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン」会長兼CEOであるベルナール・アルノー氏に明け渡し、自身は2位へとランクダウンした。
2021年には3200億ドル(日本円換算で約42兆円)もの総資産を誇っていたマスク氏だが、2023年1月時点には半分以下の1380億ドルにまで落ち込んでいる。1820億ドル(約24兆円)という資産の減少額は「史上最大の個人資産損失額」としてギネス記録に認定された。
ちなみに、マスク氏が更新するまで、この記録の保持者はソフトバンクグループの孫正義氏であった。2000年に586億ドルの損失を抱えた孫氏のギネス記録が、今回マスク氏に大きく塗り替えられたこととなる。