・「世界に高評価」のワイン、輸出・国内消費ともに急減で危機的状況

私たち国民が広く負担する税金として、1989年に「消費税」が導入されました。景気の変動による税収の揺れが小さく、2020年度以降は一般会計税収において「所得税」と「法人税」を超える金額となっています。

【一般会計税収】

財務省「税収に関する資料」より著者作成

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このように、消費税は比較的新しい税金でありながら、国の主要な税収となっています。しかし今から29年前、実は消費税に代わって「国民福祉税」という税金を作ろうという構想がありました。しかしすぐに撤回され、実現には至っていません。

国民福祉税とは、どのような税金だったのでしょうか。

幻に消えた税金「国民福祉税」とは

国民福祉税は、当時の細川内閣が打ち出した構想です。細川内閣は約40年続いた「55年体制」が崩壊して最初の内閣で、首相を務めた細川護熙(ほそかわ・もりひろ)氏の日本新党など、自民党を除く7党1会派で構成された連立政権でした。

細川元首相は1994年2月3日、午前0時50分という深夜に記者会見を行い、所得税と住民税の減税を実施する財源として、税率3%の消費税を廃止して税率7%の国民福祉税を創設すると発表します。

しかし、唐突に発表された新しい税金に政権内外の反発が大きく、また細川元首相が税率7%の根拠について聞かれた際に「腰だめ(※)の数字」と回答したことが批判され、翌日には撤回されました。細川内閣は同年4月に退陣に追い込まれます。

※腰だめ:大ざっぱな見込みのこと。

その後は消費税に代わるような構想はなく、3度の引き上げを経て、現在は国民福祉税を超える10%の税率が適用されています。税率が10%に引き上げられた際は緩和策として「キャッシュレス・ポイント還元事業」が実施されたものの、終了して久しくなりました。

消費税は所得の多寡によらず一律の税率がかけられるため、高所得者ほど負担が軽く、低所得者ほど負担が重くなる「逆進性」が問題視されることが少なくありません。