投資信託のノーロード化と共に金融ビジネスは資産管理型営業へシフト
長期投資は正義なのでしょうか。
投資信託の取扱金融機関はかつて、とんでもない売り方をしている時期がありました。それは、投資信託の回転売買です。
投資信託を購入してもらう。購入時手数料として、購入金額に対して2%程度を頂戴する。購入金額が100万円だとしたら、買ってもらった時点で2万円が販売金融機関に落ちる。
そして、これを半年くらい保有してもらった時点で解約してもらう。利益が発生していたら、とりあえず利益を顧客に返して、当初の100万円で他の投資信託を2%の購入時手数料で購入してもらう。そうすると、そこで再び購入時手数料が販売金融機関に落ちる。
この投資信託をさらに半年間保有してもらえば、都合1年間で4%、つまり4万円の購入時手数料を頂戴することができる。
かつて投資信託の販売の最前線では、このような販売方法がまかり通っていました。それが難しくなったのは、森信親氏が金融庁長官を務めた2015年から2018年の間に、顧客本位の業務運営の原則がつくられ、投資信託や保険商品の手数料開示を推し進めるのと同時に、長期投資を浸透させるべく、つみたてNISAの制度整備が行われたからといっても良いでしょう。
それと共に、投資信託に対する顧客のコスト意識が非常に高まった結果、インターネット証券会社を中心に、購入時手数料を無料にする販売金融機関が増えたことも、投資信託の回転売買を減らした理由のひとつと考えられます。そもそも投資信託の回転売買は、購入時手数料を少しでも多く稼ぐために行われたことなので、ノーロード化が進めば、回転売買をさせる意味がなくなってしまいます。
それもあってか今、多くの販売金融機関は顧客資産の回転を高めて手数料収入を膨らませるのではなく、預かり資産残高を増やすことによって、そこから信託報酬などのフィーを得るという資産管理型営業に切り替え始めています。それによってようやく、投資信託は短期回転売買のツールという呪縛から逃れられたのです。