長期投資が正義なら、なぜデイトレーダーが存在するのか

そこで冒頭の問いかけに戻るのですが、長期投資は本当に正しいのでしょうか。
もちろん、マーケットの動きを事前に予測して、上がりそうだから買う、下がりそうだから売るという行為を短期的に繰り返すよりも、長期的に成長する可能性のあるものに投資して長期間保有する方が、判断ミスを最小限に抑えることができます。その分だけ、結果的に高いリターンが得られる可能性も高まります。それは事実だと思います。

しかし、長期投資は万能ではありません。ここで問題にしたいのは、果たして金融機関の販売最前線では、長期投資の効能を伝えるのと同時に、そのリスクを説明できているのかということです。

そもそも、なぜデイトレーダーという短期売買を行うトレーダーがいるのかを考えてみて下さい。デイトレーダーとは、その日のうちにポジションを手仕舞う投資スタンスのトレーダーのことですが、彼らが短期の売買にこだわる最大の理由は、時間のリスクを取りたくないからです。

1年先のことを予測できる人はいません。10年、20年という時間軸でポジションを持ち続けた場合、その間には恐らくリーマンショック級の株価下落に見舞われるリスクがあるだろうし、それにいつ直面するかは誰にもわかりません。週末を跨いでポジションを持つだけでも、日本時間で土曜日の早朝に取引が終わるニューヨークで株価の大暴落が生じたら、週明け月曜日の東京株式市場は大暴落で始まり、取引が始まった瞬間に大損を被る恐れがあります。デイトレーダーたちは、このことを一番恐れているのです。

でも、ポジションを持つ期間が当日中であれば、この手のリスクを負わずに済みます。こうした時間のリスクは、長期投資ならではのものです。