「集中投資」や「逆張り」のファンドも――日本株をアクティブファンドにした“理由”

私が運用していた基金でも、約900億円の資産を計50本のファンドに投資していました。株式比率は20%強でしたが、国内外とプライベートエクイティ合わせて約15本。具体的には、米国を中心とした外国株のファンドが80%強。日本株のファンドが十数%でした。

日本株は3ファンド。ここが特徴的かと思いますが、3本ともすべてインデックスに準拠しないアクティブファンドでそれぞれ①「厳選集中投資」「逆張りバリュー」「中小型特化」――というタイプでした。

「厳選集中投資」は運用者が独自の観点で10程度の企業を厳選して、そこだけに投資する。

「逆張りバリュー」は、企業の実力に比して割安、つまり人気のない銘柄が値下がりしている局面で買い向かう。これも10銘柄程度でした。

「中小型特化」は、大企業や有名企業には目もくれず、将来性のありそうな中小型規模の上場企業数十銘柄だけに投資する。

これら3ファンドに共通している考え方がありました。

それは

日本の株式市場は米国などの先進国市場と異なり、企業の情報開示が不十分なので、企業の実力が正しく株価に反映されていない。そのため、詳しく分析し、将来性を的確に判断できれば市場インデックスを上回るリターンが得られる可能性が高い

ということです。実際、3ファンドは時に市場平均を下回る局面はあるものの、長期的にはそれを上回る実績を示していました。

こうして、資産全体では多くのファンドに分散するものの、いくつかのファンドは、戦略的に特定の銘柄に集中するという性格のものを組み入れていました。いわば、「分散の中の集中」ですね。

「相場を張らない」が年金運用の鉄則

この3つのファンドは、運用者が対象企業に対する独自の分析を基に、株価の動向や市場および世界経済の見通しを持って、多くの候補先から絞り込んで投資しています。つまり、相場を張っているわけです。

一方、ファンドを組み入れている企業年金サイドは可能な限り、特徴の異なる数多くの運用商品に分散投資する。徹底的に、相場を張らないのです。

企業年金が政策資産配分(アセットミックス)を決め、それに基づいて実施するのが資産間のリバランスです。例えば、債券50%、株式20%、オルタナティブ30%、合計100%と配分を決めたのなら、株式が好調で25%になり、さらに好況が続きそうであっても、決めた水準である20%(あるいは、その近辺)まで、保有株式を売って比率を減らすのです。

これは人間心理からすると結構、難しいものです。まだまだ上がると誰もが思う局面はありますからね。でも、リバランスを愚直に行うことが、結果的に長期的なリターン獲得につながる。これは多くの調査結果が示しています。

企業年金の運用担当者にとって、運用資産は自分のものではありません。それでも、こうした「欲」に勝つことは意外と難しい。だから、「リバランス」というルールを設けるのです。

みなさんにとっての投資の「ルール」は何ですか。