株からの移管先はオルタナティブ

しかし、概して多くの企業年金がこの十数年で株式比率を下げてきており、今後も方向感としてはさらに減らす先が多いように思います。

では、株式から抜いた資金はどこに振り向けるのでしょうか。最近の傾向では、多くの企業年金が「オルタナティブ」と答えます。

オルタナティブとは「代替資産」のことです。株式や債券といった企業年金の資産運用にとっての「伝統的資産」とは異なるプライベートエクイティ(非上場株式)、プライベートデット(銀行以外の投資ファンドなどによる融資)やヘッジファンド、さらに不動産などの実物資産を指します。

これらの資産は「低流動性資産」と言われ、直ちに解約や現金化できないデメリットがある一方、価格変動が市場にさらされないので比較的収益が安定しており、採用する企業年金が増えています。

それでも株式となったら…どんな対策が?

そうはいっても企業年金は、受給者への年金支払いのために現金や換金しやすい運用商品を一定程度持つ必要があります。このため、「低流動性資産」への投資を嫌う基金もあります。

また、オルタナティブへの投資比率を上げてきた企業年金も、大多数は「株式ゼロ」の領域には踏み込めずにいます。

では、どうするか。運用資産全体と同様、株式というセクター内でも徹底的に分散投資をするのです。

先日取材したある企業年金基金が、その典型的なケースでした。この基金は同業の中でも「超分散投資」で知られており、2500億円を超す運用資産全体を合計220余のファンドに分散。株式は全体の10%に過ぎませんが、それでも国内外およびプライベートエクイティを含めて30本以上のファンドを持っていました。