「インベストメント(長期投資)」は博打ではない!

ここで、GPIFについて、説明しましょう。

GPIFは厚生労働省傘下の団体で、正式名称を年金積立金管理運用独立行政法人と言います。世界最大の年金基金で、その運用資産は、2021年3月末現在で178兆円です。東京証券取引所に上場している全企業の時価総額の合計が約700兆円余りですので、いかに巨大な投資家かお分かりいただけるかと思います。

私たちの祖父母・父母の世代が、第二次世界大戦での敗戦から立ち直り営々と築き上げてきた貿易黒字が、企業と個人の収入となり、その一部が将来の年金支給のために積み立てられ、世界最大の年金基金となったものです。

さて、筆者が投資してきた「eMAXISバランス(8資産均等型)」という投資信託においては、「国内株式」はTOPIXに連動し、「先進国株式」はMSCIコクサイ・インデックス、「新興国株式」はMSCIエマージング・マーケット・インデックスという指標にそれぞれ連動しています。

TOPIXは東証1部の全上場企業、MSCIコクサイは日本を除く先進国市場の約85%(時価総額ベース)の企業をカバーし、MSCIエマージング・マーケット・インデックスは新興国26カ国の企業を運用対象としています。つまり、地球上の大半の株式が運用対象ということになります。

世界経済は上下動を繰り返しながらも成長していきます。その間、資金をじっと現金や銀行預金にしていたのでは、資産は増えません。株式投資を「インベストメント(長期投資)」として行うことで、世界経済の成長を取り込むことができるのです。

「トレーディング(短期売買)」は、誰かが儲けると誰かが損をする“ゼロサム・ゲーム”だ、というお話をしました。一方、「インベストメント(長期投資)」は、経済成長が続く限り、投資した人がみんな豊かになるプラスサム・ゲームです。

つまり、長期的な経済全体の成長に合わせて、レバレッジ効果で企業の収益が上がり、株式の価値が上がります。その株式の持分を得ることによって、経済成長の分け前にあずかろうとするのが株式投資なのです。

ノーベル賞を受賞した投資理論を紹介! 第4回へ続く>>

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北村慶著
発行所 朝日新聞出版
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