タスクフォースの報告書から保険が消える!? 円安で苦情が減少

当局はこの問題にどこまで踏み込むのか。FD原則の浸透や法制化などを議論しているのは、金融庁が主催する金融審議会「顧客本位タスクフォース」だ。この連載の前回(“官は強し”と言うけれど…、「仕組債撲滅」に至る当局の裏事情)でも紹介した通り、9月の初回の会合の資料ではファンドラップ、仕組債と並び、外貨建て保険の問題点を指摘していた。

しかし、11月に公表された報告書の案には、ファンドラップと仕組債のことは書かれているものの、外貨建て保険についてはいっさい記載がない。

「3つの的」が2つになったわけだが、当局者はこの背景を外貨建て保険に重要情報シートが適用されつつあることに加え、「ここにきて保険の苦情が減ったことがある」と打ち明ける。歴史的な円安を受け、外貨建て保険の含み益が拡大しているためだ。保険会社側は含み益の水準を契約者に知らせており、苦情どころか「満期前に解約して利益確定する動きまである」という。

これも前回書いたことだが、当局にとって「苦情は世論」だ。苦情が減っているならば、外貨建て保険を叩く理由も減る。当局が11月ごろに聞き取りしたところ、既存の外貨建て保険は足元「平均で2割程度の含み益がある」とみられる。こうした事情も仕組債との明暗を分けた格好だ。

もっとも、外貨建て保険のコストや情報開示のあり方に当局が疑問なしとしているわけではない。抱えている構図が仕組債と変わらないうえ、「重要情報シートの記載内容は不十分だ」という指摘は当局に少なくない。今後は個別の保険商品の情報開示などを巡り、官民の神経戦が繰り広げられることになりそうだ。

執筆/霞が関調査班・みさき 透

新聞や雑誌などで株式相場や金融機関、金融庁や財務省などの霞が関の官庁を取材。現在は資産運用ビジネスの調査・取材などを中心に活動。官と民との意思疎通、情報交換を促進する取り組みにも携わる。