金融庁の2023年度税制改正は早々に決着し、新たなNISAで「満額回答」以上の成果を得た。要因は3つある。

1つ目は岸田文雄首相と宮沢洋一自民党税制調査会長の関係。2人はともに宏池会に所属するうえ、いとこ同士でもある。親密な関係が従来では考えられないような大盤振る舞いにつながった。2つ目は木原誠二官房副長官を中心とした官邸が資産所得倍増プランの実現に向け、強力な指導力を発揮したこと。最後は政局に発展しかねない防衛費の財源問題が控えていたことで、NISAなどの決着が急がれた点がある。

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こうして金融庁の悲願は達成された。最終局面では政治交渉に口出しせず、いわば「たなぼた」の結果だが、これまでの労を多として同庁の貢献を4つ目に加えてもよいかもしれない。 

だが、まだやっかいな仕事が残っている。制度の普及や投資残高の拡大に向けた仕組みづくりだ。懸案は「資産形成への導き手」の育成で、この問題には官邸の意向も絡んでおり、一筋縄ではいかない面がある。

資産所得倍増の真意は“もうけ”を倍にではなく利用者を倍に

NISAの制度整備はほぼ終わった。当局の担当者が「これであと10年は大きな仕事に恵まれないかもしれない」と漏らすほどの大成果だ。同時に、庁内の関心は制度の普及や利用促進などに移っている。国にとって資産所得倍増とは、1人の投資家の利益を倍にするのではなく、NISAなどを使って資産形成する国民の数を倍にすることを意味するからだ。

金融機関や運用会社の関係者で時々誤解している人を見かけるが、資産所得倍増プランの主眼は投信などの利益率を2倍に上げることではない。あくまでも利用者を2倍に増やすことだ。

投信などで資産形成を始めるか否かは個人の判断だが、始めなかったから豊かな老後を送れなくても「それは自己責任です」と国は言えない。国民を見捨てることになるからだ。

投信の利益率が高いに越したことはないが、岸田政権が掲げる資産所得倍増プランはNISA利用者を増やし、国民全体の資産所得を倍増させることが狙いだ。

金融庁が2023年1月に公表した「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査」(2022年9月末時点)によれば、一般・つみたて・ジュニアを合わせたNISA口座の総数は1846万超に上り、国民の15%近くに当たる数字だ。中でも、つみたてNISAは同3月末からの半年間で口座数が約16.6%増えるなど比較的順調な伸びを見せている。とはいえ、国民全体の資産所得を倍増させるには力不足だ。