金融庁の動静をいつにも増して金融機関、特に地方銀行の資産運用ビジネスの担当者が注目している。当面の関心は外貨建て一時払い保険への対応だ。重要情報シートに対応するか否かに端を発した仕組債の問題は、当局と証券会社側の折衝がこじれ、多くの金融機関で事実上の販売停止に追い込まれた。外貨建て保険がその二の舞を演じるのではと気を揉んでいるわけだ。

地銀などの金融機関で投資信託の販売が振るわないなか、外貨建て保険の販売収益に頼るところは多い。仕組債に続き、保険まで取り上げられては、資産運用ビジネスの採算は目途が立たないと担当者は危機感を募らせている。

「ともかく仕組債はやめてくれ」、有力地銀の証券子会社社長の証言

そもそも、仕組債も外貨建て保険も「違法商品」ではないので、当局といえども一律に販売禁止にはできない。まずは苦情が目立つところや顧客のリテラシーなどに沿ったかたちで金融商品を提案する「適合性の原則」を逸脱しているケースを調べ、個別に対応すべきものだ。

しかし、金融庁の考えは違うようだ。西日本を拠点とする大手地銀の証券子会社の社長から、仕組債に関する金融庁とのやり取りを聞いたことがある。同社の収益に占める仕組債の比率は1割未満と目くじらを立てるほどではないが、当局は「ともかく、おたくは仕組債の販売をやめてほしい」の一点張りだったそうだ。

証券子会社側が適合性の原則を順守していること、同一顧客に過度な額を販売していないことなどをこまごまと説明したが、聞き入れられなかったという。その社長は「大手地銀グループが販売していること自体が不都合なのだろう」と理解し、当局の意向に従った。泣く子と“お上”には勝てないという話だ。