分割で受給額が変わるのは報酬比例部分だけ
合意分割と3号分割は以上のようになりますが、先述のとおり、婚姻期間中の標準報酬月額や標準賞与額を分割することになるため、分割によって影響する高齢期の老齢年金は老齢厚生年金(報酬比例部分)になります。よくいわれる「公的年金は2階建て(1階が基礎年金、2階が厚生年金)」でいうならば、2階の部分が影響を受けるにすぎません。
老齢年金全体ではないこととなり、国民年金制度の老齢基礎年金、老齢厚生年金のうちの経過的加算額(老齢基礎年金相当の差額加算部分)などは年金分割によっては変わりません。
つまり、冒頭の「果たして、離婚時の年金分割を受けると本当に夫の年金から半分が妻へ渡るのでしょうか」についての結論は「夫の年金“まるまる”から半分が妻に渡るわけではない」であり、実際のところ、婚姻期間や夫婦の厚生年金加入記録次第では分割を受けても少ししか年金が増えないことも多々あります。そのため、「離婚して1人になっても老後の暮らしも問題ないだろう」と年金分割によるプラス分をあてにするのも、たいていの場合、危険だといわざるを得ません。