共働きがスタンダードになると、第3号被保険者制度への風当たりが強くなった
しかし、この第3号被保険者を取り巻く環境はこの30年強で大きく様変わりしました。
時代とともに専業主婦の世帯よりも夫婦共働き世帯のほうが多くなったのです。
その逆転ぶりは目を見張るものがあり、1986年当時はまだ720万世帯の共働き世帯より952万世帯の専業主婦世帯が多かったのですが、1997年には共働き世帯949万世帯、専業主婦世帯921万世帯と両者は逆転し、2021年には共働き世帯は1247万世帯、専業主婦は566万世帯と、共働き世帯が専業主婦世帯の倍以上となっています(総務省『労働力調査特別調査』、『労働力調査』より)。
共働き世帯が増えていくと同時に、未婚の人も増加しました。すると、共働き世帯の妻、あるいは独身女性である会社員(ともに第2号被保険者)や自営業者の妻(第1号被保険者)から第3号被保険者に対し、“不公平”だと指摘する声があがり始めました。自ら保険料を払っていなくても、納付扱いとされて基礎年金が受給できる――その点に対する批判です。言ってしまえば、「第3号被保険者だけがお得すぎませんか?」ということでしょう。
もう1つ、別の観点から第3号被保険者制度が“やり玉にあがる”とすれば、就労調整があります。パートで勤務する当該第3号被保険者が保険料の負担を忌避して、扶養の範囲内(年収130万円未満)で働くという就労調整が行われており、就労を抑制している面もあります。つまり、働く意欲があるのに、それを抑制せざるを得ないのはもったいないということです。
主にこの2つの論点から、「第3号被保険者制度は廃止すべき」という意見が聞かれるようになりました。