会社員・公務員などに扶養されている配偶者は、年金の世界では「第3号被保険者」と区分され、現状、専業主婦やパートタイマーが主な対象者です。

この第3号被保険者は個人的な保険料の納付が不要なことから、「優遇されている」「不公平だ」といった批判も多く、第3号被保険者制度を「廃止すべき」という意見まで出ています。

第3号被保険者は1986年に生まれた

国民年金第3号被保険者制度は1986年4月に始まった制度です。

それまで主に自営業者向けの制度だった国民年金制度は、1986年4月から全国民共通の基礎年金制度となり、自営業者だけでなく会社員・公務員、その配偶者(専業主婦等)も国民年金の被保険者となりました。

その際、会社員など厚生年金被保険者が第2号被保険者、その被扶養配偶者が第3号被保険者、それ以外で国民年金に加入義務のある人(自営業者及びその配偶者など)は第1号被保険者と区分されることになりました。

実はそれまで会社員・公務員の配偶者である専業主婦等は国民年金への加入義務がありませんでした。任意で加入して国民年金保険料を納付して年金を増やすこともできましたが、任意であるために加入しない人も多い……というのが実態でした。

1986年3月以前の年金制度では、会社員・公務員の夫の年金(厚生年金や共済年金)で夫婦2人分の年金が計算されていたと言えます(妻自身は被保険者とならないと、受給者にもならなかったということです)。また、年金制度に未加入だと障害年金を受給できず、離婚した場合にも年金がないという問題もありました。つまり、専業主婦本人には年金による保障が非常に少なかったのです。

そこで、女性の年金、専業主婦の年金の権利(年金権)を確保すべく設けられたのが第3号被保険者制度です。会社員等の第2号被保険者の被扶養配偶者として、国民年金制度に強制加入(20歳以上60歳未満)となりました。現在、被扶養配偶者本人の年収が130万円未満であることなどを満たせば第3号被保険者となります。

この第3号被保険者は、国民年金保険料を納付する第1号被保険者や厚生年金保険料を負担する第2号被保険者と異なり、自ら保険料を払いませんが、年金の受給資格や年金額の計算上、第3号被保険者期間は保険料を納めた期間と見なされます。高齢になったときの老齢基礎年金は、“保険料を払った(と見なされる)”期間で計算されますので、専業主婦等も自らの年金を受給しやすくなったのです。