社会主義色の強まりを投資家が懸念

この記事の冒頭で触れたとおり、習近平政権の継続が市場に与えた影響は大きい。ハンセン中国企業株指数がリーマンショック以来の規模の大暴落となったほか、他国の市場でも中国関連銘柄は急落した。

政権に関する報道が世界に広まった2022年10月24日には、ニューヨークの市場に上場する中国企業10社の株価が急激に暴落。日本円に換算して約10兆円も時価総額が低下した。米国市場上場銘柄のなかで、中国に主要事業拠点を置く銘柄の時価総額で構成される指数「ナスダック・ゴールデン・ドラゴン・チャイナ指数」も14.4%下落。市場が3期目の習近平政権を好意的に見ていないことが現れている。

多くの投資家が懸念するのは、習近平国家主席への権力集中によって、今後の中国がより一層社会主義思想を持った国家へとシフトしていくのではないか、ということだろう。習近平国家主席は、これまで社会主義への強い傾倒を見せてきた。

習近平政権が大々的に打ち出してきた「共同富裕」というスローガンは、その1つとして挙げられる。共同富裕は「貧富の格差を是正し、すべての人が豊かになることを目指す」ということを意味し、中国建国の父といわれる毛沢東初代国家主席が提唱したものだ。

近代中国は、1985年に「先に富める者から豊かになる」という「先富論(せんぷろん)」を掲げた。国の経済活動を活発化させたことで世界2位の経済大国にまで成長を果たした。しかし、現在ではその代償として国内の格差が拡大している。

世界的な金融企業であるクレディ・スイスが2020年に実施した調査では、中国国内の上位1%の富裕層が持つ資産は中国全体の30.6%を占めるという。その一方、2020年に李克強首相が「平均月収1000元前後の低所得者やそれ以下の国民が6億人も存在する」と会見にて発言。格差の拡大が深刻化していることがわかる。

格差是正を進める習政権は2021年8月、かつて毛沢東が掲げた共同富裕をさらに具体化させて「高すぎる所得を合理的に調節し、高所得層と企業が社会にさらに多くを還元することを奨励する」と発言した。3期目の習政権では、社会主義的考えに基づくこのスローガンをさらに推し進めていくことが予想される。