テレビ出演でファンド規模が5倍に急成長
2017年2月、テレビ東京の番組、「カンブリア宮殿」でレオス・キャピタルワークスの特集が組まれました。カンブリア宮殿の「カンブリア」は、今から約5億4200万年前から約4億8830万年前までとされていて、この時期に動物の多様性が一気に増大したと言われています。これを「カンブリア爆発」と称するのですが、私たちがカンブリア宮殿に出演したことによって、ひふみ投信も爆発的に残高が伸びました。ひふみ投信とひふみプラスを合わせた純資産総額は、あっという間に5倍程度まで膨らんだのです。
大変だったのは事務方です。一気に純資産総額が増えたため、バックオフィス業務が追い付かなくなってしまったのです。2000億円が一気に1兆円弱ですから、物凄いペースでファンド規模が拡大したことになります。純資産総額が増えれば当然のことですが、私たちの利益も増えていくので、それは確かに嬉しい悲鳴ではあるものの、バックオフィスは本当に大変だったと思います。
この状況を全員で力を合わせて何とかの乗り切り、利益が増えた分は、コンプライアンスや各種業務などバックオフィス部門や営業部門の強化に投資しました。
この時期、急激にファンドサイズが拡大したため、いろいろなことを言われました。「これだけサイズが大きくなったら、インデックスのような運用しか出来なくなるだろう」とか、「ひふみらしさが無くなるかも知れない」とか、本当に大勢の方がひふみ投信の未来を心配して下さったのですが、正直、私自身はそれほど心配していませんでした。
投資信託には「3000億円の壁」という言葉があって、純資産総額が3000億円を超えると運用が困難になると言われるのですが、それはファンドのサイズに運用を合わせようとするからです。でも、投資信託にとって一番大事なのは、「どうするか」ではなく「どう在りたいか」という在り方の追求ではないか、ということに気付きました。
この気付きを得たことによって、ファンドサイズがさらに大きくなっても、運用に苦労することはありませんでした。私は、ひふみ投信をどういうファンドにしたいのか、ひふみ投信を通じてどういう社会を創っていきたいのか、それを運用する自分自身はどういうファンドマネジャーで在り続けたいのか、そういうことを徹底的に追及していこうと考えたのです。
取材・文/鈴木 雅光(金融ジャーナリスト)