高報酬の場合はあまり増えない老齢厚生年金
先述の振替加算を除けば、老齢基礎年金は1カ月繰下げにつき0.7%そのまま増やすことができます。一方、老齢厚生年金には他にも注意点があります。
それは、前回第5回の終盤でも取り上げた「在職老齢年金」との関係です。
65歳以降厚生年金の被保険者となっていると、在職老齢年金制度によって老齢厚生年金が支給停止となることがあります。47万円基準により、①老齢厚生年金のうち報酬比例部分の月額(基本月額)と、②月額給与(標準報酬月額)と③賞与(標準賞与額)の12分の1を足した総報酬月額相当額を合計して47万円を超えた場合、超えた額の2分の1が支給停止となります※。
※計算方法のさらなる詳細は第5回『60歳以降、働くと年金がカットされる!? 「年金のために給料を減らす」は得策か』をご覧ください。
老齢厚生年金を繰下げ受給する場合、繰下げ待機中は実際に年金を受給しませんが、65歳から受給を開始したものと仮定して、支給停止額を計算します。そして、支給停止とならない割合に対してしか増額されません。70歳繰下げをするとして70歳までの5年間繰下げ待機中(5年間)に平均して支給される割合が30%、残り70%が支給停止と計算される場合、30%部分に対して42%増額率を掛けた12.6%(30%×42%)の増額になる計算です。そして、この場合の12.6%の増額がされるのは、先述のとおり、65歳前の厚生年金加入記録で計算された老齢厚生年金に対してとなります。
つまり、65歳以降会社から高い報酬を受け取っていると、報酬比例部分が47万円基準を大きく超えることになり、報酬比例部分は全額支給停止(支給は0円)と計算される結果、繰下げ受給をしても報酬比例部分についての繰下げ増額はありません。