繰下げで増えない「加算部分」という盲点

老齢厚生年金に加算される「加給年金」、老齢基礎年金に加算される「振替加算」にも盲点があります。それは、加給年金であれ振替加算であれ、こうした「加算部分」については繰下げによる増額がない点です。

加給年金

加給年金とは、「厚生年金での家族手当」とも言われる制度で、例えば6歳下の配偶者を持つ65歳の人が老齢厚生年金(※厚生年金加入期間20年以上で計算)を受給し始めると、最大で配偶者が65歳になるまでの6年間加給年金(年間39万円弱×6年で合計約233万円)が加算されます。

ところが、70歳まで繰下げるとその時点で配偶者はすでに64歳になっているため1年分(約39万円)しか加給年金は加算されず、その1年分の加給年金には繰下げの増額はありません。

振替加算

振替加算は同じく6歳年下の配偶者を持つ方の例で言うと、配偶者が65歳を迎えた時点でその方の「加給年金」は加算が終了します。しかし、今度は配偶者のほうの老齢基礎年金に一定額が“振り替え”られ、加算されるのが「振替加算」です。2022年度に65歳になる人であれば年額3万8717円加算され、一度加算が始まると生涯受給することもできます(※加算される人の厚生年金加入20年未満が条件)。

老齢基礎年金を繰下げする場合、老齢基礎年金の待機中に振替加算は加算されず、繰下げ受給開始後振替加算への増額もされません。

ただし、振替加算は加給年金と異なり、後の世代になればなるほど加算額は減り、1966年4月2日以降生まれの人には加算されなくなります。振替加算は若い人ほど気にしなくてよいものと言えるでしょう。

ちなみに、一部の方が受け取れる、65歳までの有期年金「特別支給の老齢厚生年金」にも繰下げ受給制度はありません。