大きなお金が動く相続は、正しい知識を持っていないと思わぬ損をしてしまうことがあります。今回は「養子縁組」を使って相続税対策をしようとした50代男性の「こんなはずじゃなかった」失敗事例を紹介します。

妹と不仲…でも相続は円満に進めたい

山下康介さん(仮名、57歳)は妻と高齢の父と3人暮らし。母が5年前に他界し、そのときの父の憔悴ぶりを心配した山下さんが、妻を説得して同居を始めたのでした。一人息子(30歳)は既に独立して隣県で1人暮らしをしています。

山下さんの目下の悩みは相続でした。山下さんには妹が1人いますが、子供の頃から何かと折り合いが悪く、お互いに家庭を持ってからはすっかり疎遠になっていました。母が他界した際に久しぶりに会いましたが、そのときも事務的なこと以外ほとんど言葉を交わしていません。それでもたった1人の妹。相続でもめることだけは御免だと、円満に進めたいと考えていました。

父の財産は1億円ほど。そんなにたくさんあることに山下さんは驚きましたが、もっと驚いたのは相続税でした。山下さんは父と同居していますが、相続分は妹と2分の1ずつでいいと考えていました。しかし、調べたところそれぞれに500万円ほどの相続税がかかることが分かり、その額を負担に感じます。

なるべく妹を煩わせずに節税対策をしたい――。山下さんは妹と話し合うことがおっくうでもあり、自分でうまく節税対策を考えた上で相続を迎えるのが最善だと考えたのです。

しかし、それが山下さんの失敗の始まりでした。