養子縁組で相続人を増やして節税を

山下さんが目を付けたのは「養子縁組」でした。養子縁組で父の相続人を増やし、その分控除額を増やせれば、相続税を軽減できると考えたのです。調べたところ、実際に似たようなケースで、自分の子供(被相続人からみれば孫)を被相続人と養子縁組させ、相続人が自分・妹・自分の子供(被相続人からみれば孫)の3人になるようにして数百万円の節税をしたという事例もありました。

山下さんは、妻と息子の2人を父と養子縁組させようと考えました。相続人が自分と妹を含めた4人になることで節税効果を高め、その上で、従来の予定通り2分の1ずつを妹と分け合おうとしたのです。節税対策とはいえ、まるで駒のように妻と息子を使うことに若干のためらいは感じましたが、背に腹は代えられぬと山下さんは父に提案します。

父は提案を快諾しました。結果的にそれが妹のためにもなる、という点が大きいようでした。父は昔からあまり子供のことには介入しない人でしたが、それでも山下さんと妹の不仲には長年心を痛めており、何とかしたいと思っていたのです。

一方、妻は突飛な提案に少なからず驚き、反発もしました。妻にしてみれば、そもそも気の進まない同居を承諾した上に、さらに養子にまでなれという話なのだから当然といえば当然です。しかし、賛成してくれた息子の加勢も手伝って、今回も説得の末に妻は了承しました。

養子縁組の手続きは基本的には婚姻届と同様、証人2人の署名が必要ですが、複雑なものではありません。当人同士の合意で進めることができ、相続人である妹の同意も必要ありません。

これで万事がうまくいく。そう山下さんは安堵していましたが、父の一言がきっかけで状況が一変します。「こんなはずじゃなかった」と後々に山下さんが深く後悔することになる、大きな修羅場へと発展してしまったのです。

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