・創業130年、東証一部上場の老舗大企業が巨額破綻…株主は全て失う悪夢

企業の破綻では、通常考えられないようなさまざまな出来事が起こり得ます。その中でも、「Nuts(ナッツ)」ほど多くの珍事に見舞われたケースは少ないでしょう。粉飾やそれに伴う実質的経営者の逮捕は序の口で、報酬未払いで監査人に契約を打ち切られたほか、上場廃止の直前には取引所のシステム障害に巻き込まれました。

10月3日はNutsが上場廃止となった日です。今日はNutsの破綻劇を振り返りましょう。

金商法違反に帳簿の水増し…負債5億円を残し破産

Nutsはさまざまな業態に変貌してきた企業です。設立当初は塩化ビニール製品の販売が中心でしたが、その後はビデオレンタル事業、ゲーム事業、アミューズメント関連事業、医療関連事業といったように、メイン事業を目まぐるしく変遷させてきました。商号も三高産業→トップボーイ→コモンウェルス・エンターテインメント→Nutsと何度も変更しています。

しかし業態転換はうまくいかず、2016年3月期以降は4期連続で純損失を計上しました。その上、2020年2月には偽計の疑いで証券取引監視委員会の強制調査を受け、翌年3月には告発されています。告発によると、Nutsは運営していた医療施設の入会に伴う売上高を5億6300万円と公表していたものの、実際には2000万円しかありませんでした。同社の実質的な経営者らは金融商品取引法違反で2021年6月に逮捕され、同年12月には有罪判決を受けています。

さらに2020年4月、Nutsの監査人を務める監査法人は、同社には帳簿上8億900万円あるはずの現金が実際には50万円しかないと指摘しました。Nutsは帳簿を水増しし、実体より財務が安定しているように見せかけていたのです。

当該監査法人はNutsとの契約を解除したため、Nutsは監査人が不在という状況に陥りました。Nutsは同年8月に別の監査法人と契約を結び直したものの、翌月には監査報酬の支払いができなかったために再び契約を解除されるという異例の事態に発展します。

こうした状況の中、Nutsは2020年9月16日に同社の取締役から破産手続きを申し立てられ、裁判所が破産手続きの開始を決定したことから、約5億1000万円の負債を抱え倒産となりました。Nutsの破産決定を受け、取引所は即日に同社株式の上場廃止を決定し、同年10月3日を上場廃止日としました。