監査人もお手上げ!「意見不表明」とは

Nutsの破綻劇では、監査人を選任できるか否かも注目点でした。監査人の設置は上場企業に義務付けられているため、監査人の不在は法令違反になり得る緊急事態だからです。

【金融商品取引法193条の2「公認会計士又は監査法人による監査証明」(一部抜粋)】
金融商品取引所に上場されている有価証券の発行会社……が、この法律の規定により提出する貸借対照表、損益計算書その他の財務計算に関する書類で内閣府令で定めるもの……には、その者と特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査証明を受けなければならない。

出所:e-Gov法令検索 金融商品取引法

ただし、監査人を選任できれば安心というわけではありません。公認会計士や監査法人は独立した立場で監査を行い、監査報告書などでその意見を表明します。従って、会計が正しく行われていなければ監査人のお墨付きを得ることはできないのです。

特にずさんな会計が行われている場合、「意見不表明」という監査意見が示されることがあります。これは財務諸表が適正か否かを判断できないほど、会計記録が残されていない場合や監査を実施できず十分な監査証拠を入手できない場合などに表明されます。

【4つの監査意見】

出所:日本公認会計士協会 監査意見

「不適正意見」や「意見不表明」は上場廃止基準に抵触する監査意見であり、取引所が市場の秩序を保つために必要と判断すれば上場廃止となるため注意してください。また上場廃止とならなくとも、不明瞭な会計が行われている可能性が高いため投資はおすすめできません。

取引所は注意を促すため、「不適正意見」「意見不表明」、および「限定付適正意見」が示された上場企業を開示しています。投資の前に一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。