日本だけ緩和を続けて大丈夫?

冒頭お伝えした通り、日米の金利差拡大は円安として表れています。日本は現在まで金融緩和を維持していますが、アメリカは2021年11月に金融緩和の縮小を決定しました。さらに今年6月には、ユーロ圏の金融政策を担う欧州中央銀行も金融緩和の終了を発表しています。これにより、主要な先進国において日本だけが金融緩和を維持している状況に置かれました。金融政策の違いは各国の利回りにも表れています。

【日本・アメリカ・ドイツの10年国債利回りの推移(2022年1月3日~9月12日)】

Investing.comより著者作成

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日本だけが金融緩和を維持することで、想定外に物価が上昇することを懸念する声は少なくありません。しかし日本銀行が公開した「展望レポート(2022年7月)」によると、日本は慣行的に物価や賃金が上がりにくいことなどから、日本銀行は物価の上昇幅がいずれ縮小していくと考えているようです。

【日本銀行政策委員会における消費者物価指数(除く生鮮食品)の見通し】
・2022年度:2.2~2.4%(中央値:2.3%)
・2023年度:1.2~1.5%(中央値:1.4%)
・2024年度:1.1~1.5%(中央値:1.3%)

出所:日本銀行 経済・物価情勢の展望(2022年7月)

なお、日本銀行は為替や国際商品市況の動向などによる物価の上昇は否定していません。日本銀行の思惑を外れ、物価が著しく上昇する可能性もあるでしょう。その場合、日本が金融緩和の縮小に踏み切る可能性はあります。

しかし、金融緩和の縮小は景気を冷やす効果もあり、低成長が続く日本においてその判断は簡単ではありません。日本銀行は難しいかじ取りを強いられるでしょう。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。