経営側や担当者の熱意も従業員の資産形成を後押し

iDeCo+はスタートから4年経過しましたが、あまり普及していないようです。国民年金基金連合会の加入等の概況によると、2022年5月時点のiDeCo+の実施事業所は4,471、加入者数28,656人となっています。同じ時点のiDeCo加入者数は246万人ですから、全体の2%にも満たないことになります。

疎外要因としては、就業規則の整備が求められるなどの手間が発生すること、iDeCo加入者でなければメリットを感じることができず、社員間での不公平感が生まれること、などが想定されます。

また、企業の経営者からすると、iDeCo+の掛金が社員に見えにくいという面もデメリットのようです。社員からみると、給与天引きされた個人の掛金は、給与明細の控除項目として記載されますが、中小事業主掛金は記載されません。また、残高を確認するWEBサイト等でも、本人掛金、事業主掛金、といった色分けもされていません。

それに対し、職場iDeCoで奨励金をつけると給与明細に記載され、見えやすいという面が評価されているようです。

iDeCo+の加入者は、一つの事業所あたりに換算すると6~7人ほどです。この傾向は、制度スタート時からあまり変わっていません。人数要件が300人以下に緩和されても変わっていないようです。

企業が最低でも1,000円の掛金拠出をしてくれるのであれば、もう少し、利用率が上がってもいいように思いますが、なぜでしょうか。iDeCoの認知率が上がってきたとはいえ、口座開設率が低位にとどまっている理由とも関連しそうです。

それまで投資に無縁だった社員にとってiDeCoは未知のものです。ご自身で資産運用する制度、といわれても「元本割れのリスクが怖い」と思う方が多いのも現状です。税の優遇措置があるといわれても、確定申告をしていない方には、あまりピンとこないという側面もありそうです。

野村證券でも職場iDeCoの実施をお手伝いすることがあります。利用率が高い企業とそうでない企業の違いは、導入を決めた経営側や実務を行う総務人事部の熱意に起因するようです。また、身近に投資に詳しい人がいてアドバイスをくれる、というのもきっかけになります。

日本のNISA、DCも将来的には400兆円規模の成長余地

日本の個人金融資産は2,023兆円で、その54%が現金・預金で保有されています(2021年度末)。iDeCoやNISAで保有されている金額は、約28.4兆円、資産全体の1.4%にすぎません。

NISAのモデルとなったISA(Individual Savings Account)がある英国では、どうでしょうか? ISAとDCが1.8兆ポンド(約279兆円)で、全体の23.3%を占めています。

日本の確定拠出年金の参考にした401(k)がある米国をみると、DCとIRA(Individual Retirement Accont)で25.3兆ドル(約2,859兆円)、全体の21.8%を占めています。
日本においても、NISAとDCで家計金融資産全体の2割、400兆円程度の規模に成長する余地があると考えられます。利便性の高い制度に変えていく政策も重要ですが、少し背中を押してくれる経営者や周囲の人がいることも、資産形成に大きく影響しそうです。