外的要因に左右される損保業界。業績のリスク回避には次代を担う成長ドライバーがカギに

損保業界の今後に目を向けると大きな死角は見当たらない。もちろん気候変動による自然災害の激甚化は深刻なリスクだが、全産業に関わることであり、固有のリスクとは言いづらい。大手損保は国内市場の成熟化を見越し、早期から次代の成長ドライバーとなる海外市場の開拓を進めていた。先述の東京海上HDは売上高の約5割を海外事業で稼ぐ。

地理的かつ保険種目が偏らず事業の分散が図れるためパンデミックのような世界的事象は例外だが、特定の市場で損失が出ても、他の地域で巻き返せる強靱な事業基盤がある。日本と同様に保険市場が成熟化している欧米だけでなく、経済成長に伴い今後の市場拡大が期待されるブラジルなど新興国にも進出。今後、種まきした成果が利益貢献という形で現れることが予想される。

損保大手3グループにおいて特色あるビジネスを展開するのがSOMPOHDだ。同社は米国のビッグデータ解析大手パランティア・テクノロジーズと2019年に合弁会社を設立。損保事業における事故や、15年に参入した介護事業から得られる生のデータ(リアルデータ)を生かしたソリューション開発をスタートした。

すでに介護事業では「見える介護予測する介護」と銘打ち、入居者のバイタルデータなどを活用する介護DXを実現。同社は時期を明示していないが、各事業から得られるリアルデータによるソリューション提供で中長期的に5000億円の売上高を目指している。東京海上HDやMS&ADHDもデータ活用を加速しているが、あくまで保険領域での活用に留まっておりSOMPOHDとは戦略性に違いが見られる。

損保業績は良くも悪くも自然災害という外的要因に左右される。天災ゆえに先々の見通しを描きづらく、そこは損保特有のリスクといえるだろう。だからこそ地域や種目のポートフォリオ分散のほか、新事業の創出などあの手この手で強靱な経営基盤の確立に動いている。好決算連発の背景にはこうした経営戦略の寄与も大きそうだ。

執筆/東十条 ハル
不労所得生活を夢見るアラサー兼金融ライター。仕事を通じ金融の面白さに触れ、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。上級資格の合格に向け勉強中だ。最近、スカッシュに興味が持つが、コロナ禍にかまけて出不精に拍車がかかっている