自動車保険や火災保険、海外旅行保険など私たちの日常生活や事業活動に伴うあらゆるリスクを補償する損害保険。5月に発表された損害保険大手3グループの2022年3月期連結決算は各社そろって増収・増益となり、正味収入保険料(売上高)と当期利益は過去最高を更新した。損保は生命保険と同様にストックビジネスであり、盤石の顧客基盤から安定的に保険料収入を得られる。21年3月期に比べコロナ影響もほぼ剥落し、景気変動に強い優良銘柄の実力を発揮している。

損保の売上高9割を占める大手4社の存在感

シェア約9割――。日本損害保険協会の統計によると、20年度の損保業界の国内市場規模は正味収入保険料ベースで約8兆6927億円となり、19年度比で1%ながら成長した。そのシェアの約9割を占めているのが大手4社(東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険)だ。

残りの1割をテレビCMやインターネット広告などで社名を目にする機会も多いダイレクト型損保会社が占めている。ダイレクト型は代理店型のビジネスモデルを展開する大手4社と異なり、顧客はネット上で自由に保険に加入できる。最大の特徴は保険料の安さだが、大手4社の牙城を崩しきれない状況が長年続いている。

大手4社の中でも、国内最大手が東京海上日動だ。その親会社が東京海上ホールディングス(HD)であり、東京海上日動あんしん生命保険など生保会社も傘下に持つ。東京海上HDの22年3月期連結決算は正味収入保険料が前期比7.8%増の3兆8878億円、当期利益も同2.6倍の4204億円だった。注目すべき項目が「修正純利益」だ。修正純利益とは通常の予測を超える保険金支払いに備え毎年一定額を積み立てる責任準備金の一つ「異常危険準備金」など保険会社特有の仕組みをのぞいたグループの利益指標だ。

22年3月期連結決算における修正純利益は前年対比2422億円増の5783億円に上った。東京海上HDは21年に23年度を最終年度とする3カ年の中期経営計画をスタートしている。その中計で示した中長期ターゲットが修正純利益5000億円超の達成だった。また、修正純利益と同様に重視している修正自己資本利益率(ROE)についても12%の目標を達成。中計で掲げた中長期ターゲットを初年度から達成する良い意味の〝異常事態〟が起きた。

ここで一つの疑問が浮かぶ。5000億円超という数字は一見するとインパクトがあるが、そもそも保守的な目標値だったのではないかというものだ。ただ、その線は薄い。国内に限らず、世界の保険グループに対象に広げても3カ年平均で修正純利益5000億円超を達成しているのはドイツの保険会社アリアンツしかいない。保守的との指摘は当てはまらず、相当なチャレンジであるとわかる。

実は単年度であれば修正純利益5000億円超を達成している会社は少数だが存在する。だからこそ今後はこの水準を維持出来るか否かが一つの焦点となる。同社が発表した23年3月期連結業績予想では3グループで唯一増益を予想しており、修正純利益も5500億円の見通しを示している。名実ともにグローバル損保の地位を確固たるものにしている。