損保大手3グループは好決算。自然災害とコロナ禍の影響減が背景に

さて、22年3月期連結決算において損保大手3グループが好決算だった理由をひもとくと、自然災害の減少という外的要因が一つある。海外ではハリケーン「アイダ」のほかテキサス州の寒波といった災害が起きたが、国内では大規模自然災害が例年より少なく数百億円程度、利益を押し上げる要因となった。

損保業界は10年に一度と呼ばれる大型台風や豪雨災害などの自然災害によって18年から2年連続で保険金支払い額が1兆円の大台を突破。自然災害の激甚化・頻発化が従来の公算を凌駕する時代に突入したと各社トップの大きなペインポイント(悩みの種)となった。ただ、直近2期は18-19年と比べると収束しており、業績の底上げにつながっている。

逆に大規模自然災害が発生しても見かけ上の業績はそこまで悪くないのも特徴だ。積み立てている異常危険準備金を取り崩すと会計上は負債ではなく利益と見なされプラスに働く。また、引き受けた保険契約(原保険)の一部もしくは全てを他の保険会社に出再する「再保険」と呼ばれる仕組みがある。この制度が機能すると、出再先の保険会社が一部もしくは全ての保険金を肩代わりするため元受保険会社の保険金支払い額は少なくなる。

好決算の背景には自然災害とは別に、コロナ禍も関係する。当初こそイベントの中止に伴う損失をカバーする「興行中止保険」の支払が海外事業を中心に膨らみ利益を圧迫したが、損保各社は迅速に同保険の引き受け制限などの対応を実施。22年3月期決算ではパンデミック特有の影響がほぼ剥落した。加え、利益面では自動車事故の保険金支払いが想定よりも少なく推移していることも好材料だ。

コロナ禍以降、国・自治体による要請や感染防止の観点から旅行を自粛する傾向が見られた。車に乗って外出する機会が減れば自動車事故が起きる確率も当然に減る。自動車保険は各社の保険料収入の5割程度を稼ぎ出す屋台骨だ。22年度は21年度に比べウィズ・コロナに舵が切られ経済社会活動が正常化したが、コロナ禍前まで移動の総量が回復していないことがプラスに働いている。