2022年5月末に、米国の株式指数S&P500は年初来高値から20%以上の下落を記録した。これは米国株式市場において弱気相場を意味する「ベアマーケット」の定義を満たしたことになり、市場は下落トレンドがより強く意識されるようになっている。
そんな逆風が吹き荒れるなか、数少ない追い風となっているのが約20年ぶりの高値を付けているドル円相場だ。米ドルで取引される米国株は、円安ドル高が進行することで円ベースでの資産価値が上昇するからだ。
しかし一方で、近年まれにみるドル円相場の高騰は円高への下振れリスクが高まり、ドル資産の価値が大きく毀損する危険性があることも意味する。そこで今回は将来の円高局面に備えて理解しておきたい、為替ヘッジの仕組みについて解説する。
米ドルベースで利益を出せても、円ベースでは損になることがある!?
為替ヘッジとは、保有資産の「為替リスク」の影響をヘッジ(回避)する運用手法だ。為替リスクとは一般的に、為替相場が変動することで円ベースでの資産価値が変動する可能性を指す。米ドルで取引される米国株をはじめ、外貨建て資産に投資する際に注意すべき要素だ。
為替リスクを考えずに外貨建て資産に投資すると、思わぬ損失を被る可能性がある。例えば1ドル=100円のときに、株価1000ドルの米国株式を1株買い立てたとしよう。
1年後、1株1100ドルに値上がりしたときに売り付けた場合、米ドルベースでは100ドルの利益を得る。しかし、売却時に為替が1ドル=80円と円高に振れていた場合、円ベースでの損益は次のようになるのだ。
※ 取引手数料、為替手数料は考慮していない。以下同様
この通り、株価が購入時より上がっているにもかかわらず、損益がマイナスになっていることがわかる。為替ヘッジはこのような損失を抑えるために行われるわけだ。