EVへの投資はESG投資が後押し

過去の記事でも紹介してきたが、EV化を後押しするESG(環境・社会・企業統治)投資が世界的に活発になっている。EV専業メーカーであるテスラの株価はEVバブルの後押しもあり、この2年で10倍以上に上昇した。米国の新興EVメーカーのリヴィアンも21年9月の上場時は時価総額が10兆円を超える場面もあり、新株発行による調達額は119億ドル(約1兆4500億円)に達した。ダイムラーやボルボ・カーズなどは20年に環境関連事業に資金使途を絞った「グリーンボンド(環境債)」を発行し、資金調達をすでに実施。国内メーカーでもトヨタは21年3月に、安全技術やEVの開発向けなどにサステナビリティ債を円建てで計1300億円、ドル建てで27億5000万ドル起債した。ホンダも22年3月に米ドル建てグリーンボンドを総額27.5億米ドル発行することを決定したと発表。グリーンボンドの発行は、同社として初めてとなる。このように自動車メーカーもESG投資を活用して電動化を推し進める。

EVシフトは一つの手段

社会全体で掲げるカーボンニュートラルという目標に対して、自動車のEV化は一つの手段となる。身近な自動車から排出される二酸化炭素(CO2)を削減でき、その数が一定数あるということで、特に自動車業界が注目している。日産が世界初のEV量産車「リーフ」を発売したのが12年前の2010年。技術的にももちろん進歩はしているが、昨今の急激なEV化は画期的な技術革新ではなく、社会全体からの強い要望の意味合いが強い。そのため、まだ黎明期であり、車両価格や電池の改良、充電スポットの問題など超えなければならないなど、その壁は高い。そうした中でエンジン車を主戦場として戦ってきた日欧米の各自動車メーカーは新たに急激なEV戦略を打ち出しシェア拡大を図ろうとしている。現時点のEV販売台数ではテスラが先頭を走り、世界最大の自動車市場を抱える中国勢が追随する形となっているが、EVが本格的に普及するであろう5-10年後、どのメーカーが笑っているのかはまだ誰にもわからない。

執筆/鎌田 正雄
合同会社ユニークアイズ代表。大手産業総合紙で記者経験を積み、主に自動車業界や中小企業など製造業の取材に従事し、2021年に独立。「ものづくりのまち」で有名な東京都大田区生まれで町工場の息子。はやりのポイ活で集めたポイントを原資に少額ながら超低リスク投資を始めた