バフェット氏の企業投資の考えに魅せられPEの道を模索

ところで、ロンドンで生活していた時、その後の私の人生を決める大きな出来事がありました。

ウォーレン・バフェットとの出会いです。

といっても直接、会ったわけではありません。彼の投資の考え方に触れる機会があり、衝撃を受けたのです。彼は株価の値動きで投資先を選ぶのではなく、永続的に利益を生み出し続けられるビジネスモデルを持っているかという点に着目して、投資先を選んでいます。株式という証券を保有するというより、企業全体を保有するという考え方です。そして一度、投資したら少なくとも5年は保有し続けます。しかも、市場が悲観的になって株価が下落したら、それは素晴らしい事業を持った企業を買ううえで絶好のチャンスだと考え、多額の資金を投入します。

しかも、株主としての企業との関わり方も独特です。91年の不正入札事件を契機に倒産の危機に陥ったソロモンブラザーズ証券の暫定会長に就任してその危機を救います。バフェット氏のビジネスオーナーとしての所作を見る中で、「株主って経営に関与できるんだ」という極めて当たり前のことに気づいたのです。

日本に帰国した後、再び債券ディーラーに戻って日々、債券の売買をするつもりはありませんでした。これからどうしようかと考えた時に、ムクムクと蘇ったのが、「金融+コンサルティング」によって身を立てようと思った青雲の志でした。そしてバフェット氏を研究していた私が、株主として経営に関与することで、その企業価値を上げて儲ける「プライベートエクイティ(PE)」という分野に注目したのは至極当然のことだったのです。2000年代前半は、ちょうど日本ではPEが勃興してきた時代でしたが、このPEの分野に自分の役割があるのではと転職活動を開始しました。その時も、いつも私の脳裏にあったことは、バフェット氏のような企業投資、企業との関わり方ができないものか、というものだったのです。

取材・文/鈴木 雅光(金融ジャーナリスト)

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