リーマンショックの混乱の中、第1号ファンドの募集を開始

コモンズ投信を立ち上げ、最初のファンドとなる「コモンズ30ファンド」を設定したのが2009年1月19日のこと。そこに至るまでには、さまざまな紆余曲折がありました。当初、ファンドマネジャーになってもらう予定だった友人は、家庭の事情でジョインできなくなり、急遽、別のファンドマネジャーを探さなければならなくなりました。

さてどうしたものかと困り果てていた時、コモンズ投信の立ち上げに参画してくれた、元野村証券でトップアナリストだった佐藤明さんが、「キャピタルを引退した方で凄いファンドマネジャーがいる」と教えてくれました。その方がコモンズ30ファンドの初代ファンドマネジャーを務めて下さった吉野永之助さんでした。ちょうど70歳でキャピタルを引退したものの、「運用者としては満足できたけど、残念なのは日本人に長期投資の魅力を伝えきれなかった」という心残りがあったそうです。「忘れ物を取りに戻る気持ち」で、と言ってくださりコモンズ投信に加わっていただけることになりました。

渋澤氏(左3人目)の申し出を受け入れコモンズ投信を創業した伊井氏(右2人目)ら創業時の様子

それからはまさに怒涛の日々でした。そして、いよいよ2008年8月1日に関東財務局に投資信託会社の設立申請を提出しました。9月下旬には申請が通る見通しでしたが、リーマンショックの影響でマーケットも金融業界も大混乱に陥っており、その最中に申請が通るかどうか不透明になりました。

それでもなんとか予定通りに申請が通り、年明け早々の募集開始を目指すことになりましたが、そこから証券保管振替機構に口座を開いたり、投資信託協会の理事会での承認を受けたりなど、さまざまな事務手続をクリアして、いよいよ募集期間に入りました。

しかし、タイミングが非常に悪かった。何しろリーマンショックの直後で、マーケットは完全に冷え切っていたのです。私自身は初期設定で10億円くらいの資金を集められると見込んでいましたが、想いとは裏腹になかなか資金が集まらず、想定よりもだいぶ少ない1億1800万円でのスタートになりました。

取材・文/鈴木 雅光(金融ジャーナリスト)

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