渋澤氏とコモンズ投信を設立。個人向け運用に注力

ところで、話は少し遡ります。日本にインターネットが普及し始めたのは1997年頃からですが、それからしばらくして、あるインターネット上に面白い金融マーケットのSNSが立ち上がりました。

「バーチャル・マーケット・ジャパン」がそれで、株式組、債券組、為替組というようにハンドルネームが色分けされていて、ログインする時には、その日の日経平均株価、債券先物、ドル/円の引け値を予想してから入るという芸の細かさで、そのコミュニティには最盛期で1000人くらいのマーケット関係者がいました。そのコミュニティを運営していたのが、現在コモンズ投信で会長を務めている渋澤健だったのです。

メリルリンチで働きながら、このコミュニティのオフ会や勉強会を通じて、そこに参加していた人たちと交流を深めていきました。そんな日々を過ごしているなかで、メリルリンチの企業カルチャーが大きく変わってしまったことに失望感を抱いていた私は、自分でブティック型の証券会社を立ち上げようと考え始めていました。そんな時、渋澤から連絡をもらったのです。それは、「直販の投資信託会社を立ち上げるので手伝って欲しい」というものでした。

連絡を受けた私は、「是非。私も証券会社を立ち上げるので、渋澤さんの投資信託ならしっかり販売するから」と言ったところ、「いやいや、そうではなくて、私自身はマネジメントが苦手なので、一緒に投資信託会社を立ち上げて、伊井さんにマネジメントをお願いしたいんだよね」という話でした。

正直、自分は証券会社を立ち上げるつもりでいたので、この申し出を受けるかどうするか少し悩んだのですが、日本の個人層に向けてちゃんとした運用を届け、長期の資産形成を提供したいという点では、証券会社も投資信託会社も同じかも知れないと思うようになり、渋澤からの申し出を受けることにしました。こうして2007年11月に投資信託会社を立ち上げるための準備会社として、株式会社コモンズを立ち上げたのです。