厚生年金に加入すると将来の年金はどの程度増えるのか?
このように段階的な適用拡大によって、厚生年金に加入する機会がますます増えます。たとえ週20時間の勤務でも、厚生年金保険料の負担が生じますが、その分将来の年金も厚くなり、国民年金制度の老齢基礎年金だけでなく、厚生年金保険制度の老齢厚生年金の受給額も増えることにつながります。
国民年金第1号被保険者から厚生年金被保険者となった場合
国民年金第1号被保険者(任意加入被保険者も含む)が払う国民年金保険料の場合は月額1万6590円(2022年度)と定額ですが、厚生年金被保険者の厚生年金保険料は会社からの給与や賞与の額に応じて決まり、給与からの保険料は「標準報酬月額×保険料率」、賞与からの保険料は「標準賞与額×保険料率」で計算されます。週20時間勤務で、もし、月給11万円の場合、11万円(標準報酬月額)×18.3%(保険料率)×1/2(被保険者負担分)で、月額1万65円の保険料負担となります。
しかし、国民年金保険料を納付した場合は老齢基礎年金だけが増えるのに対し、厚生年金被保険者となって厚生年金保険料を払った場合であれば、同じように老齢基礎年金(あるいはそれに相当する経過的加算額)が増えるだけでなく、老齢厚生年金(報酬比例部分)も増えることになります。5年間の国民年金保険料納付では老齢基礎年金が年額9万7000円強増えるのみであるのに対し、標準報酬月額11万円で5年間厚生年金に加入すると、老齢基礎年金と老齢厚生年金(報酬比例部分)を合計して年額13万円以上増えることになるでしょう。
国民年金第3号被保険者から厚生年金被保険者となった場合
一方、国民年金第3号被保険者として扶養の範囲内で働いていた人が厚生年金に加入すると、それまでと違い、自ら年金の保険料を払うことになります。もし、5年間、第3号被保険者から標準報酬月額11万円での厚生年金被保険者に変わると、保険料は0円から月額1万65円となり、受給額の増額分も先ほどと同様に9万7000円(老齢基礎年金)から13万円(老齢基礎年金+老齢厚生年金(報酬比例部分))に変わります。
冒頭でも少し触れましたが、社会保険料負担の有無についての年収基準額を示す「106万円の壁」という言葉もあり、その壁を超えないようにパートやアルバイトを調整されている方もいると思います。確かに、厚生年金に加入すると保険料が天引きされ、月々の手取りが減ることもあります。しかし、2階建ての老齢基礎年金・老齢厚生年金は65歳から一生涯受給できます。つまり、今の手取りを優先し106万円の壁を超えないように働くよりも、長生きすることに備え、2階建てでこれら老齢年金を増やしておくと、長い目で見た安心を手に入れられるとも言えるのです。