地政学的リスクにより金融資産の価格が大きく乱高下するケースは少なくない。ウクライナ情勢の緊迫により、日経平均株価の2022年2月24日の終値は2万5970円82銭と、前日から478円79銭下落。一方で金価格は高騰を続けており、同日の2月24日時点で1グラムあたり7805円と過去最高額を記録した。

投資の世界には有価証券などと異なる値動きをする商品へ投資する、コモディティ投資という考え方がある。今回はコモディティ投資の基本的な特徴や商品ごとの特性を前編で、そしてメリット・デメリット、投資への活かし方について後編で解説する。

●前編はこちら

資産分散の効果は高いが、価格変動は読みづらいというデメリットも

コモディティ投資のメリット・デメリットは主に以下の通り。

メリット
・インフレリスクに強い
・分散投資によるリスク抑止も期待

デメリット
・インカムゲインがない
・価格変動の予測が比較的難しい

まずはメリットから見ていこう。

一般的に、コモディティ投資はインフレに強いとされている。インフレ進行時は物価が上昇し、相対的に貨幣の価値が下がるため、資産を現金として保有していると目減りしてしまう恐れがある。しかし貴金属などの現物資産の価値は物価の上昇に連動して上がる傾向にあるため、インフレで資産が減るリスクを避けられるのだ。

また、現物資産は株式や債券などと異なる値動きをすることが多く、分散投資によるリスク軽減の効果が期待できる。これはインフレに強いというメリットとも関連するが、貴金属やエネルギー、あるいは農作物は“それ自体”に価値がある。貨幣のように流通量の急激な増加や地政学的リスクの高まりで「価値が減る」という可能性は低い。

そのため、今回のように社会経済が不安定になると、リスク回避の観点から株式や債券の売りが進み、商品市場への資金流入が増える傾向にある。ただし、後述するが、農作物に関しては供給量の増加による価格低下のリスクはあり、この限りではない。

次にデメリット。コモディティ投資には大きく「インカムゲインがない」「価格変動が予測しづらい」といった注意点がある。

おさらいとはなるが、投資の利益は一般的に「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2つだ。インカムゲインとは配当や分配金など保有中に得られる利益で、キャピタルゲインは値上がり益など資産を売却したときの利益を指す。

株式や投資信託と違い、現物資産は基本的にインカムゲインがないため、キャピタルゲインを狙っていく運用が軸となる。なお、コモディティを投資対象とする投資信託も多くの場合、分配金が発生しない。例えば、楽天証券ではコモディティセクターに投資する投資信託を6つ取り扱っているが、そのうち直近で分配金が支払われたのは1つだけという現状だ。

値動きの予測が比較的難しいのもコモディティ投資の注意点のひとつ。需要と供給で価格が決定するのは株式などと同様であるものの、天災や地政学的リスクなど需給のバランスを決める要因が複雑、かつ予測が難しい。とくに農作物は豊作などで突如価格崩壊が起きる可能性もゼロではない。金融市場とは異なる要因で値動きすることは留意しておこう。