SBI証券の投信売れ筋ランキング2025年1月のトップは「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」で前月トップの「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(通称:オルカン)と入れ替わった。第3位と第4位は、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」と「iFreeNEXT FANG+インデックス」で前月と同じだった。第5位に前月の第6位から「SBI・S・米国高配当株式ファンド(年4回決算型)」が浮上した。また、前月はトップ10圏外だった「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」が第8位に、「SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド(為替ヘッジなし)」が第9位にジャンプアップした。一方、前月第8位の「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信D 毎月Hなし予想分配」、第10位だった「Tracers S&P500ゴールドプラス」がトップ10落ちとなった。

 

◆トランプ政権で「S&P500」一択?

2024年は1年間を通して売れ筋のトップに君臨した「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が遂に第2位に後退した。2025年に入ってから、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」への資金流入が堅調を維持していることと比較すると、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の退潮が目立つ。新NISAがスタートした直後は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」に資金が集中し、2024年1月は1カ月間で約3440億円の資金流入になる人気ぶりだった。同月に「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は資金流入額ランキングでは第2位だったものの約2090億円の資金流入額だったため、その差の大きさが際立っていた。

新NISAを前にして「どのファンドを投資対象にするのか?」ということは、大きな関心事であった。当時は、米国の株高が「割高」な水準にあること、また、リスク管理の観点からも米国だけに投資するよりも全世界に幅広く分散投資した方が長期投資にふさわしいという意見が強く、中には、「(成長するインド株式などを念頭に)長期投資には新興国株式への投資は欠かせない」という声もあって「全世界株式(オール・カントリー)」が最強という主張が強かった。結果的にスタートから10カ月間程度は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」がトップを独走するという状況だった。

ところが、2024年の年末には「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の人気は衰え、その人気は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」に移っていった。この人気の変化は、やはり、それぞれのファンドのパフォーマンスの評価があったのだろう。2024年12月末時点で過去1年間のトータルリターンは「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が40.78%に対して「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は32.48%。1年で8%以上の差があるほか、過去3年(年率)(21.19%対17.72%)、過去5年(同23.19%対18.73%)でも「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」には敵わない。そもそも時価総額加重平均で大型株から組み入れ上位にしていけば、世界最大の市場である米国の企業が上位を占めるのは当たり前で、ポートフォリオの中身に大きな違いが出てきにくい。常に、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の亜流といえるような二番煎じの成績しか残せないことが、過去5年間も続いてしまったことになる。

加えて、2025年1月に就任した米トランプ大統領の「アメリカ第一主義」は世界的な貿易を混乱させることが明らかだ。さっそく、2月1日にカナダとメキシコに25%の関税を課し、中国に課している関税を10%引き上げる大統領令に署名してみせた(現在は措置の延期を発表)。今後は欧州にも関税をかける考えと伝えられており、このような大国の身勝手な振る舞いが新興国経済には大きな打撃になりかねない。2024年10月以降にインド株式市場に上昇の勢いがなくなっていることにも、インド株の割高調整という側面以外に、米国の通商政策の不透明さが加わっているのではないだろうか。世界の貿易が混乱することが予測される中で、世界の株式市場に分散投資する価値もまた低下していると判断されたのだろう。