運用益非課税のiDeCoならではの活かし方
運用による利益が非課税になる制度として「NISA」「つみたてNISA」といった制度も有名です。これらとiDeCoの違いとして挙げられるのが、預金などの元本確保型商品で運用できることと、売買が自由という点です。iDeCoで運用している商品の全部または一部を売ってラインナップにある他の商品に切り替えたとしても、運用益非課税の枠組みの中に居続けることができます。
例えば、昨年のような株式市場が好調な時は、株式型投資信託を保有していたとすれば、その資産価値は相当値上がりしましたよね。資産額が増えて嬉しい話ではありますが、それは株式市場の影響を受ける資産額が増えているともいえます。株式市場は日本でも海外でも3割ぐらい値上がりすることもありますが、同様に3割ぐらい値下がりするということもよくあります。
つまり、保有している株式型投資信託は一時的にそれぐらい減る可能性もあるということです。そうでなくてもiDeCoはコツコツその資産を積み上げていくので、運用商品として選択していれば自然とその残高は増えていきます。
株式投資信託の保有額が自分にとって精神衛生上多すぎると感じるような額に達した場合には利益部分を中心に売って価格変動のない預金を買う、というような売買をするのが、自分のリスク許容度に合わせた運用ということになります。この売買について、額や回数などの制限は一切ありません。一方「NISA」や「つみたてNISA」というのは、売ったら、その売却代金は「NISA」や「つみたてNISA」といった非課税の枠組みの中に留めることはできず、受け取るしかありません。
この利点を活かすとすると、投資信託の売買を非課税運用が続けられるiDeCoの中で実際に体験して、どういうものか学んでおくと良いと思います。というのも、多くの方は投資信託も株式同様に、刻々値段がついているとか、値段を指定して売買できると誤解しているからです。投資信託は、その日の取引終了後保有資産の時価評価額のトータルが確定してからしか1口当たりの単価が決まりませんから、1日にひとつしか価額がありません。そして、売買の注文はその日の取り扱いとして取りまとめられて、値段が確定した後、執行されます。
文字で読んでも、なかなかわかりにくいと思いますが、百聞は一見に如かず、ご自身で体験すればよくご理解いただけると思います。iDeCo内の資産は千円以下でも売買することができますから、利益が出ているときに少額でやってみると良いと思います。実はこの経験を通じて学んでいただきたいことはもう一つあって、売買する際の自分の心の葛藤です。今日売った方がいいか、明日の方が少し高く売れるのではないか、そんな心の迷いを振り切って注文するという練習にもなるからです。
今回は、税の面からiDeCoの特長を見てみました。投資信託の売買はiDeCoという運用益非課税の仕組みの中で、ぜひ少額で体験してみてください。そして、運用益非課税の制度は確定申告における運用益の損益通算の対象ではありませんから、価格が暴落して損をしているとき売るのではなく、利益が出ている局面でチャレンジされることをおススメします。経験を通じた学びはみなさまの、iDeCo以外の資産管理にもきっと役に立つと思います。