パッシブだけの市場では、結局リターン全体が低下する

最後にマクロ的な観点から、アクティブの必要性について触れたいと思います。投資家の視点では最終的にリターンを得られるかどうかがすべてであり、パッシブでアクティブよりも高いリターンが得られるならばパッシブもすべて肯定されますが、市場全体の観点から見ると答えは異なります。

仮にすべての運用がパッシブになると、市場の機能が大きく損なわれることになります。損なわれる機能の1つは、市場の価格発見機能です。市場では、アナリストが企業を調べることで株価が適正価格に近づきますが、アクティブが存在しない世界では、株価を適正価格に近づけようとする力が働かなくなるため、株価が割高や割安状態に放置されるようになってしまいます。また、投資家が株式を買う際の基準が、業績改善等によって「その企業の株価が上がりそうか」ということではなく、その銘柄が指数に組み込まれているかどうかになるため、企業にとっては株価を上げようという意欲がわかなくなります。

それに対してアクティブであれば比較的少数に集中投資をするため、企業とエンゲージメント(対話)を行うことで協力して企業価値を上げることができますが、パッシブの場合はこのようなことは期待できません。パッシブのみの世界になってしまったら、結局は市場全体の地盤沈下によってパッシブからのリターンも低迷することになります。マクロ的にはアクティブの存在は必要なのです。

ここまでの話を聞くと、100%パッシブというのは「運用戦略としてちょっと極端なのではないか」と思った人がいるかもしれません。そう思ったのであれば、アクティブにも少し資金を振り向けることを検討してみてください。パッシブと違い、アクティブには運用者の想いが反映されているので、選ぶ楽しみもあると思います。ぜひ、その過程を楽しんでいただきたいと思います。