今回ご紹介するご相談者は、40代と50代の女性です。2人とも老後に向けた資産形成が気になるとのことですが、この2人、考え方が全く違います。
50代のご相談者(田中 恵さん・仮名)は「もっと早くから投信積立をやっておけばよかった」と言い、40代のご相談者(柳田由香里さん・仮名)は「今始めなくても、50代から始めればよい」と言います。見事に対照的な40代と50代ですが、今回は、この2人の資産形成の悩みとそれに対するアドバイスをお伝えします。
もっと早く投資を始めればよかったと後悔する50代
田中 恵さん(仮名)プロフィール
・年齢:52歳
・都道府県:千葉県
・家族構成:夫婦2人暮らし(子供はすでに独立)
・職業:パート
・すでに行っている資産運用:老後のためにお金を準備したいと思い、約1年前からiDeCoをスタート(バランスファンドを運用)
・相談に来た際のお悩み:「iDeCoをスタートさせたが、60歳まであと数年しかなく、このままの運用でよいか不安」
田中さんは52歳のパート勤務の女性です。子どもはすでに独立し、これからは夫婦の老後のお金を作っていきたいとのことです。1年前から自身のパート代から毎月2万円をiDeCoで積み立て始めました。
運用している投資信託は安定型のバランスファンドです。「運用期間があと数年しかないので、なるべくリスクが低そうな投資信託を選びました」とのこと。一方で、このままの運用で本当によいのか心配だとも言います。
というのも、現在30万円弱の元本で4%ほど資産が増えているようですが、運用益を金額にすると約1万円。「これだけ? このままで、老後までにお金は準備できるの?」という不安から、いつになったら利益は膨らむのだろうと焦ってしまうと言うのです。そして、「もっと早くから始めていればよかったのですが……」と後悔されていました。
「60歳まであと数年しかない」とおっしゃっていますが、運用期間が十分に取れないことへの心配は不要です。なぜなら2022年5月からiDeCoの加入年齢が国民年金の被保険者であれば60歳未満から65歳未満に引き上げられるからです。ご相談者はパートですが厚生年金に加入していますから、国民年金の被保険者に該当します。
65歳になるまで、今のままパートを続けるのであれば、あと13年積み立てできることになります。もし60歳でパートを辞めたとしても、その後、積み立てはできませんが、資産を受け取らずに運用だけは70歳まで続けることができます(2022年4月からは、制度改正により75歳までに延長)。
それにiDeCoの資産を受け取っても、またそのお金を運用すれば、より長い期間運用ができます。もっと早くから始めるべきだったと言いたくなる気持ちは分かりますが、後悔する必要はありません。
田中さん自身が思っている以上に運用できる期間は長いのです。その上で、利益が少ないと焦ってしまうなら株式の比率を高めてもよいかもしれません。リスクが小さい運用商品を選んでいるがゆえにではありますが、利益が少ないと不満もあるようですから、少しリスクを取って株式型のファンドを運用資産に取り入れるのも1つの方法です。少ない割合から株式型のファンドを取り入れ、様子を見てみては、とアドバイスしました。