iDeCoにまとめて受け取るメリット
企業型DCの資産をiDeCoの口座に移すことができるのは企業型DCの加入資格を喪失した後、受け取る手続きをしていないことが条件になります。年金として一部を受け取り始めていたりすると、資産を移すということはできません。
iDeCoにまとめるメリットとしては口座が一つになる、ということがあります。それによって、運用管理の手間が減り、口座管理料もiDeCoの口座管理用だけ負担すれば済むようになります。後者の口座管理料については、お勤め先によっては加入資格喪失後も会社が口座料を負担してくれるケースがあるので、その場合はメリットではなくなります。
2つ目のメリットは、一時金で受け取る場合の税金がかからない枠である退職所得控除が大きくなる、ということがあります。退職所得控除は、加入期間が20年までは年あたり40万円、20年を超えると年あたり70万円の控除枠が積み上がります。企業型DCの資産を持ち込むということはその資産に紐づく企業型DCの加入期間もiDeCoの口座に持ち込むことになります。企業型DCの加入期間が20年を超えている方であれば、60歳以降のiDeCoの加入期間で積み上がる控除枠が1年間で70万円、65歳までiDeCoに加入すれば350万円の控除枠が積み上がることになります。iDeCoに資産を移さず、60歳から65歳まで5年間iDeCoに加入した場合は5年×40万円で200万円の控除枠ですから、企業型DCの資産が多い方は一時金で受け取る際の課税額を減らすことにつながります。
iDeCoにまとめて受け取るデメリット
もちろん、デメリットもあります。何といっても、企業型DCの資産をiDeCoに移す際には保有商品がすべて現金化(=売却)され、さらに移換手続きの間はその資産は運用ができないということです。売却は事務処理として行われるので、タイミングを自分で指定することはできません。また、資産移換手続きには2か月程度を要することが多く、その間にマーケットの急騰があったとしてもそれを享受することはできません。もちろん、マーケットによっては、非常に高い値段の時に売ることができたり、またマーケットの急落前にその影響を受けずに済むということもあるかもしれませんので、必ずしもデメリットとは言い切れません。ただ、最悪のケースになることもあり得ますのでデメリットとして挙げさせていただきました。
もう一つは現金化して移換した資産はiDeCoのプランで提示されている商品でしか運用できなくなることです。こちらもiDeCoの商品ラインナップの方が魅力的であればデメリットにはなりませんが、企業型DCで運用していた商品が気に入っていたとすればデメリットになるでしょう。
さらに、受け取りのパターンもiDeCoの契約先で用意されているパターンの中から選択することになります。一時金、年金、併給といった選択肢はiDeCoでも容易されていますが、併給する場合の一時金と年金の組み合わせ比率や年金の年間受け取り回数などは契約先によって選択肢がそれほどないケースもあります。自分の資金ニーズに合った受け取りパターンができなくなってしまったということになると致命的ですので、予めいつどのように受け取るか検討し、それが可能かどうか事前に確認しておく必要があります。
以上、デメリットとなる可能性がある点を3つ挙げさせていただきました。