60歳以降のiDeCo加入の鍵は「受け取らないこと」
注意点はこの方の場合60歳に到達した時点で加入期間が10年ありますから、iDeCoの資産を受け取る権利である「受給権」を取得することです。しかし、その権利を行使せず「受け取らない」こと、ここが大事なポイントです。
国の制度であるiDeCoの資産を受け取る手続きをしてしまうと自分で「年金資産を作っていく側」から「受け取る側になる」ということを申告することになります。そうすると、法律が改正されてiDeCoに加入できるほかの要件を満たしたとしても、 再び年金資産を作る側に戻ることはできず、iDeCoに加入することはできません。
また この年金を「受け取る側になる」という判定は iDeCoだけではなくて公的年金も対象です。公的年金を60代前半から受け取る繰り上げ受給をした場合も、同様に「年金資産を受け取る側になった」というように判定されますので、公的年金を繰り上げすると、iDeCoに加入をすることができなくなります。
また、現在50代60代の方の中には、特別支給の老齢厚生年金といって、60代前半に厚生年金を受け取れる方がいます。対象になるのは、男性が昭和36年4月1日以前に生まれた方、女性は昭和41年4月1日以前に生まれた方です。この特別支給の老齢厚生年金を原則通りの年齢から受給する場合は、iDeCoに加入することができます。しかし、特別支給の老齢厚生年金の場合も繰り上げて受給をしてしまうとiDeCoに加入をすることはできませんのでご注意ください。
ということで、60歳になった時点で、iDeCoや企業型DCに加入していた期間や運用指図をしていた期間が合わせて10年以上ある方には「iDeCoを受給する権利を取得されました。どうぞお受け取りください」というご案内が運営管理機関から届くのですが、安易に受け取り手続きを進めてはいけません。60代前半にiDeCoに加入しようという方は、受け取れる権利をiDeCoの積み立て完了までは行使しない、そして公的年金も繰り上げ請求をしない、 ここが肝要です。
一方で 企業型DCや確定給付企業年金といった会社の退職金制度は年金を受け取ってもiDeCoの加入に何ら支障はありません。ここもよくご質問を受けるポイントです。会社の退職金制度の場合は安心して受けとってください。